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「GSOMIAは、日本のレーダーで捉えた北朝鮮のミサイルの詳細なデータを得ることができる、まさに韓国の生命線。長年、最前線で向き合っている韓国軍の現場からは『クーデターで直接大統領に訴えるしかない』という声まで出ているといいます」(在ソウル特派員)

 防衛省情報本部情報官などを歴任するなど各国軍との情報共有に詳しい、元海将の伊藤俊幸・金沢工業大学虎ノ門大学院教授は次のように語る。

「GSOMIA破棄について特に危機感が強いのは、沿岸部の島の防御を担当している海兵隊です。2010年には北朝鮮に延坪島(ヨンピョンド)が砲撃される事件が発生し、韓国軍人2名が死亡しています。彼らにとって、北朝鮮は文字通り戦う相手です。その『敵国』のミサイルが進化しようとしている今、情報源である日本を切り離す決定を下した文在寅大統領に対しては強い憤りを感じていると思います」

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2010年11月、北朝鮮から攻撃を受け煙が上がる延坪島 ©getty

「いつも同じパターンで苦しむ国」

 この状況を産経新聞ソウル支局長の名村隆寛氏は、次のように解説する。

「他の国から見れば、『素直にGSOMIA破棄を中止すれば良いのに』と思うのですが、文大統領も一度破棄と言ってしまった手前、やすやすと手を下ろせない。プライドもあるのでしょう。あれだけかばっていた曺国前法相もいまや検察に出頭して事情聴取中で、これ以上、弱いところを見せられない。来年4月には国会議員の選挙も控えています。国内的にも容易に引けないのです。結局、自分で飛び降りながら、這い上がり方が分からないで困っている状態。一言で言うと『いつものパターン』です」

 GSOMIA終了日の11月22日には、名古屋で主要20カ国・地域(G20)外相会議が予定され、康京和(カン・ギョンファ)外交部長官の来日も可能性があるという。

 デッドラインが迫る中、文在寅大統領はどのような決断を下すのだろうか。

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