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 このように、ITと金融が融合される世界は銀行員やファイナンシャルプランナーにとっては脅威でしかありません。ロボットは忘れることも眠ることもありません。人間が寝ている間に自動で取引をしていてくれるなどもあるでしょう。それでは、従来型の金融サービスやアドバイザーはこの世から消えてしまうのでしょうか?

世界で拡大する「ファミリーオフィス」とは

 そんな中、拡大を続けている金融サービスがファミリーオフィスです。ファミリーオフィスは6世紀頃のヨーロッパの王族の資産の管理が起源という説もありますが、ロックフェラーやモルガン家など超富裕層の家族へのサービスをするために設立されました。

 現在では、資産の運用以外にも移住の際のビザの支援、住まい探しや会社の設立のサポート、税務や法務、子息の学校の願書のサポートなどありとあらゆる生活周りのサポートを、運用・税務・法務などのあらゆる分野に精通したプロ集団が行っています。いわゆる富裕層向けのワンストップサービスなのです。顧客からフィーをいただくことによって、運用以外のファミリーサービスも行う場合が多いです。

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 過去10年間で世界中のファミリーオフィスの数が大幅に増加していて、この傾向は今後も続くと予想されています。アーンスト・アンド・ヤングによると、シングルファミリーオフィス(一家族のみの資産を運営管理)は現在約1万で、2008年から10倍に増加しています。Campden WealthのCEOであるDominic Samuelsonが実施した調査によると、ファミリーオフィスは現在4兆ドルを超える資産を保有しているとも言われています。

婚活支援に人材紹介「ファミリーオフィス化する」日本の地方銀行

 日本にはこのようなサービスがないと思われる人が多いかもしれません。実は今、地方銀行がファミリーオフィスに近いサービスを提供し始めているのをご存知でしょうか。

 規制緩和によって、地方銀行は農産物の販売から、婚活や人材紹介、相続や事業承継のアドバイスなど多角的なサービスを提供するようになりました。地元の経営者などに密着している地方銀行だからこそできるサービスでしょう。地元企業が海外進出をする際に現地の必要な情報を提供したり、提携企業を紹介するなども行なっている地方銀行もあります。

 生き残りをかけて、まさに金融機関は大転換をしているのです。

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