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後藤田正晴はなぜ「護憲」だったのか?

 保阪さんが今の憲法改正論議に決定的に欠けていると指摘する「歴史への深い考察」。とりわけ後藤田正晴らの政治家たちがなぜ「護憲」だったのかを理解する必要があるという。

保阪正康氏 ©文藝春秋

「今の憲法改正、とりわけ『9条改正』についての論議はどうでしょうか。安倍首相には全く歴史の教訓から学ぼうという姿勢が感じられません。戦後70年近く、日本人は今の憲法のもとで国づくりをしてきました。後藤田に限らず、自民党内の戦争体験世代には『護憲』という直接的な言い方はしないものの、その考えであることを時に漏らす有力者は少なくありませんでした。宏池会、三木派、松村派、そして田中派の議員が多かったと思います。自民党が改憲を党是としながらも、その動きがほとんど表面化しなかったのは、これらの議員の『抑止力』が働いていたからでしょう。

 さらに戦後の保守本流の政治家たちの多くも、憲法を維持する、あるいは変えようとしないという姿勢でずっとやってきました。

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 代表格ともいえる吉田茂は、本心はともかく、言っていることは当時の社会党より護憲的でした。共産党が『自衛権否定はおかしい』と言ったら『そんなことはない』と反論したほどです。その流れを引く池田勇人も佐藤栄作も、田中角栄も内心はともかく改憲は公言しませんでした。保守本流こそ『護憲』の側にいたのです。

 とするならば、現在国民に改憲を訴えている安倍政権は、国民に向けてその意思を明らかにするより先に、まず後藤田に代表されるような自民党にあって護憲的立場を貫いてきた先達に、なぜ自分は改憲なのかについて説明し、新しい言葉で改憲を訴える必要があるのではないでしょうか。ところが、今の改正論は『押し付けだ』『占領憲法だ』という感情的かつ通弊的な議論が先行するだけで、まっとうな議論が何もなされていません」

 保阪さんのインタビュー全文は「文藝春秋」12月号および「文藝春秋 電子版」掲載の「『憲法改正』後藤田正晴の警告が聞こえる」で読むことができます。

出典:「文藝春秋」12月号

文藝春秋

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「憲法改正」後藤田正晴の警告が聞こえる