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小池知事、五輪後をみすえてロープウェイを東京に!

環状2号線開通の遅れも、これで解決?

2017/03/07
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 豊洲新市場の問題は、建物地下ピットで発覚した汚染水の問題から、用地取得を行った経緯にまで飛び火。東京都が百条委員会を設置して、当時の関係者から事情を聴取する事態にまで発展している。

飽きやすい有権者の心をつなぎとめるには? ©文藝春秋

  小池百合子東京都知事は2003年の第一次小泉純一郎内閣で環境大臣に抜擢されたが、時の首相が得意としたのが敵をこしらえて徹底的に戦う「劇場型政治」。小池知事のやり方は当時の親分の手法をも上回る巧みさで、都民の支持は高く、メディアもこれまでのところは小池都政におおむね好意的といえる。

  しかし、豊洲新市場問題もさることながら、これからはあと3年先に迫った東京五輪、そして東京五輪後の東京の姿、方向性をわかりやすく示していかなければ、「飽きやすい」有権者の心をつなぎとめることは難しくなる。

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 東京五輪後、晴海の巨大な選手村跡地の行く末は?

 豊洲新市場予定地から、一歩都心寄りの晴海地区には東京五輪にあわせて選手村の設置が予定されている。4万坪を超える広大な敷地に約4000戸の選手村が建設されるのだ。では五輪終了後、この敷地はどうなるのだろうか。予定では、選手村は土地建物ごとデベロッパーに売却され、デベロッパーは選手村として使用した住宅をスケルトン状態に戻して再整備、さらに超高層住宅2棟を加えて約5650戸の住宅とし、その多くを分譲する予定になっている。

  払い下げを受けるデベロッパーはさぞや笑いが止まらないかと思いきや、各社の顔色は意外に冴えない。理由は2つ。供給戸数のあまりの多さと交通アクセスだ。

  首都圏(1都3県)におけるマンション供給戸数は2016年で3万5772戸、対前年比で10%以上下落した。2000年代初めにはおおむね8万戸から9万戸が供給されていたのに比べ、マンションマーケットは大幅に縮小しているのだ。そのうち東京都区部に限っていえば、2016年で1万4764戸、対前年比で20%以上の下落になっている。

  小さな土俵で相撲をとらなければならなくなったデベロッパーにとって、晴海という立地で一時に6000戸もの供給を任せられるのは荷が重すぎると感じても仕方がない。安い金額で払い下げを受けられたとしても、選手村の住宅は棟内の住戸をいったん解体してスケルトンにして分譲仕様に仕立て直す、新しく建設する超高層マンションは建設費の高騰で、分譲価格は相当の高値にしないと採算が合わないという。

   晴海はもともと交通アクセスが良好ではない。選手村には今、築地市場が移転できない問題で開通が遅れている環状二号線道路が敷設されるが、都営大江戸線「勝どき」駅にも、東京臨海新交通臨海線(ゆりかもめ)の「市場前」駅にも徒歩で15分以上かかる。舛添前都知事時代に、環状二号線道路にはBRT(Bus Rapid Transit)という燃料電池で走るバスの専用レーンを設けることになっているが、果たして都心までのバス通勤を快適と思う人はどれほどいるだろうか。

虎ノ門ヒルズから豊洲までをロープウェイでつなごう!

  そこで提案をしたい。開通遅れが必至の環状二号線道路の真上にロープウェイを敷設してみてはいかがだろうか。たとえば五輪組織委員会が入居する虎ノ門ヒルズを起点に汐留、築地市場(跡地)を通過し、豊海、晴海、そして新市場ができる予定の豊洲までをつなぐのだ。

湾岸エリア活性化の切り札に最新型のロープウェイを! ©iStock.com

 ロープウェイといって馬鹿にすることなかれ、大型のロープウェイであれば高速で、一時に数十人を輸送できるし、雨風にも意外と強く、運行停止となる頻度は少ない。地下鉄を建設する場合などに比べて建設費用もはるかに安いはずだ。バスでとろとろと都心に向かうよりも通勤も快適であろう。選手村跡地に建設されるマンションにも大きな付加価値となることは間違いない。

 通勤の利便性だけではない。このロープウェイは増え続ける国内外の観光客にも大歓迎されるだろう。東京都心から湾岸エリア、豊洲新市場の見学に大勢の観光客が訪れることで湾岸エリアの活性化につながることも期待される。

 今、東京で一番の夜景を眺められるのはレインボーブリッジと言われている。なるほどレインボーブリッジから見る東京はまるで宝石を散りばめたような美しさだ。しかし、残念ながら橋は、多くのワイヤーが橋を支えるために張り巡らされている。せっかく橋を渡る自動車の助手席や、ゆりかもめの座席からスマホで撮影しようにも、ワイヤーが邪魔であることこのうえない。

レインボーブリッジのあるある=景色を撮ろうとするとワイヤーが邪魔 ©文藝春秋

 ところが、ロープウェイであれば、視界を遮るものは何もない。レインボーブリッジよりもさらに都心寄りを通過するロープウェイから眺める東京の景色は最高であろう。沿線に聳え立つタワーマンションの窓前を通過するという懸念があるかもしれないが、通過時だけ車両の窓を一瞬で曇らせるガラスにすれば問題は少ないはずだ。電車とちがって騒音もほとんどない。利用料も通勤客には安くし、観光客には高く設定することで両方の需要を見込むことができる。

「ゆりかもめ」ならぬ百合子の「ゆりウェイ」を

 橋や道路、地下鉄を作るのもよいが、ロープウェイから思い切り東京を俯瞰する。このロープウェイは、すでにお台場を走り回る通称「ゆりかもめ」にあわせて小池百合子都知事がすすめる新・東京戦略「ゆりウェイ」と名付けてみてはどうだろうか。大阪で話題の学校名よりもお洒落な感じがするのだが。

 ロープウェイの先に新しい東京の姿がみえるはずだ。

小池知事、五輪後をみすえてロープウェイを東京に!<br />

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