一見、事故物件とは無縁に思える高級住宅街。しかし、その中でも確実に、殺人・自殺・孤独死といった“事件”は起きています。今回はそんな「高級住宅街における事故物件」についてご紹介したいと思います。(全2回の1回目/#2に続く)
田園調布で起きた無理心中事件
東京の高級住宅街というと、真っ先に「田園調布」を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。かつて渋沢栄一が中心となって立ち上げられた田園都市株式会社が開発・分譲した、駅から扇状に広がる街並みが特徴的な、日本有数の高級住宅街です。
その田園調布には、一体どれだけの事故物件があるのか――。実は、私が事故物件の情報提供サイト「大島てる」を始めた平成17年(2005年)以降でいうと、この「扇形」のエリアに事故物件はたった1軒しかありません。そこは、庭先に生い茂る木々に遮られて、道路からは直接建物が見えないような、典型的な“お屋敷”でした。
その家には、たった一代で富を築き上げた70代の男性が住んでいました。しかしある日、その男性は妻とともに、ベッドで血を流して死亡しているのが発見されます。なぜか、その胸に散弾銃を抱えたまま……。やがて遺体の傷や部屋に残された痕跡から、警察はこれを「無理心中事件」だと結論づけました。男性はまず妻を銃で撃ち殺し、その後銃口を自らに向け、引き金を引いたのです。