ホテルをはじめとする宿泊業界が活況を呈している。一口に宿泊業といってもその形態は様々だ。旅館業法においては宿泊施設として、旅館、ホテル、簡易宿所、下宿などが定められている。また18年6月には近年台頭してきた民泊について新たに「住宅宿泊事業法」を施行し、民泊を法的に位置付けた。
それでは宿泊業におけるそれぞれのカテゴリーは現在どんな状況にあるのかを見てみよう。
2009年まではホテルよりも旅館の方が多かった
実は日本ではつい最近まで、宿泊業においてはホテルよりも旅館が圧倒的に多かった。2005年では旅館は軒数で5万5567軒、客室数で85万室を数え、ホテル8990軒、69万8000室をはるかに凌駕していた。
この数値が客室数において逆転するのが2009年。そして2017年現在では旅館は3万8622軒、68万8000室と軒数で約30%、客室数で約19%も減少している。いっぽうホテルは同年で1万402軒、90万8000室と軒数で約16%、客室数で約30%もの高い伸びを示している。
旅館と聞くと、温泉宿など観光地にある宿というイメージが強いが、もともとは都会にも数多く存在し、ビジネス客や、東京などに出てきて子供に会ったり、観光したりする地方からの客たちでにぎわってきた。こうした旅館は比較的小規模な家族経営のところが多かったために、時代の進展とともに一部はビジネスホテルなどに看板を書き換えながら細々と生きてきたが、多くの旅館は経営者の高齢化や相続の発生などで事業承継が叶わずに廃業したために、その数を急激に減少させてきたのである。
安く泊まれるカプセルホテルが急増
旅館経営を圧迫したのはホテルの隆盛ばかりではない。旅館業法上、簡易宿所と呼ばれる宿泊形態の拡大もその一因だ。簡易宿所といえば以前は日雇い労働者などがその日の宿泊所として利用するものなどが大半だった。ところが最近ではビジネスマン人口の増加にともなって、通常のホテルよりも安く泊まれるカプセルホテルがその数を急激に伸ばしてきた。
カプセルホテルは客室としての仕切りがなく、簡易なベッドが大広間にいくつも並べられ、他の客と共同で利用する形態をとる。風呂場や洗面などの水回りを共同化できるために設備投資を抑えられるのが事業者側のメリットだ。