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亡くなる1週間前に「中曽根と安倍政権」について指摘

 実は、中曽根氏が亡くなる1週間ほど前に「中曽根と安倍政権」についてすでに指摘していた人がいる。訃報を聞いたとき、私はすぐにこの記事を思い出した。

「(問う 最長政権:1)安倍政権は『ビルになったそば屋』 」(朝日11月22日)

 このなかで近現代史研究者の辻田真佐憲氏は安倍政権を過去と比べ、

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《あえて似ているというなら、中曽根政権。安倍首相は「戦後レジームからの脱却」、中曽根氏は「戦後政治の総決算」を掲げた。と言いながら両氏とも対外政策は米国一辺倒だった。政権を維持するためのリアリズムを重視するあまり保守はほとんどファッションと化している面もある。》

 さらに現政権の《憲法改正もどこまで本気なのか。首相の周りで支える保守系の文化人も、ビジネス保守というか、真剣に歴史を語っているのかどうか、疑問に思う事例がいっぱいある。》という指摘が印象的だった。

©︎文藝春秋

意見が異なる人間も大事にした“すごみ”

 中曽根元首相の「政権運営のすごみは人事の妙」と書いたのは政治ジャーナリスト角谷浩一氏(日刊スポーツ)。

 87年夏、中曽根氏や外務省はイラン・イラク戦争で機雷がまかれたペルシャ湾の安全航行確保のため「自衛艦の派遣」を強く主張したが後藤田官房長官が拒否したので断念というエピソードを紹介し、

《官房長官が政権の柱であることがよくわかる。また、第二次内閣からは宏池会の護憲派、栗原祐幸氏、加藤紘一氏と防衛庁長官をハト派に任せた。改憲論者ながら要には考えの違う人材を置く人事も政権の足をしっかりと固定していたといえる。》

 意見が異なる人間も大事にしたのが“すごみ”だとし、《どうしても現政権との比較になるが、その差は大きい。》と結んだ。

©︎文藝春秋

 そんななか私が注目したのはこちら。中曽根氏を偲びつつ「今」を語っていたのが石破茂氏である。

「ものすごく政治に緊張感があった。長期政権であるが故に緊張感が失われる、というのは違う」(毎日)

 ああ、こんなにハッキリとした“匂わせ”も珍しい。石破氏、また粗末に扱われそう。

 あ、もしかしたら石破氏の扱いに着目するだけで中曽根政治と安倍政治の違いが今もわかるのかも。

 以上、過去からの読み比べでした。