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ここで都議会のドン、登場

 では、このときの百条委員会を仕掛けたのは誰か?

 内田茂なのである。のちに“都議会のドン”と呼ばれる男。「週刊文春」(2016年9月29日号)は次のように書く。

《そもそも内田氏が“ドン”としての地位を揺るぎないものにしたきっかけは、浜渦氏だった。》

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《〇五年、内田氏主導で都議会に百条委員会が設置され、石原氏の右腕だった浜渦氏はやらせ質問を巡る答弁偽証で副知事辞任に追い込まれる。》

ドン内田(中央) ©共同通信社

 これをきっかけに内田氏はますます力をつけた。内田氏は石原氏の長男・伸晃氏を都連会長に担ぎ、都知事の手綱も巧妙に握った。この「浜渦から内田」の流れをみると、石原慎太郎の強大なリーダーシップは幻想であった可能性も読み取れる。

 先週の石原氏の会見前の新聞の見出しをみてみよう。

「慎太郎反撃 ひな祭り会見」「果し合いに行く侍の気持ち」(夕刊フジ 3月3日)

 勇ましい。で、どうだったか。

「石原氏 苦しい釈明」(読売新聞 3月4日)
「部下が 議会が 専門家が……」(東京新聞・同)

 石原氏は「都庁全体の結論。議会も含めてみんなで決めたことだ」と述べ、失笑を買った。

「トランプは家族を重用しすぎで違和感がある」とコメントした人

 ここで考えてみたい。

「専門的な部分は部下に任せ、リーダーは大局的な目から判断する」のと、「周囲も同じように力を持ち、リーダーはレームダック化して機能していなかった」は一見似てるが、途方もない差がある。

 石原氏は後者で、何も知らなかったという言葉は「真実を言っている」と想像するとゾッとする。最もシュールで深刻なオチ。

 そもそも週2~3日しか登庁しなかった石原氏が、都政の何を知っているのか。

 短い時間のなか、言われるまま書類にハンコを押していたのだろう(3日の会見ではそのハンコすら「押したことを覚えていない」と言っているのだが……)。

 都政に興味がない都知事の時代がずっと続いていたのだ。

《ある部長級職員は、石原氏について「特定の分野にしか興味がなく、それ以外は部下任せ。(会見に)驚きはなかった》(朝日新聞 3月4日)

何をやっていたのか ©文藝春秋

 では石原都知事は何をやっていたのか。「公私混同」である。しかも、カネの使い方で都知事の座を追われた舛添要一がかわいく見えてしまうほどの。

《ツルの一声で2001年に始めたトーキョーワンダーサイト(TWS)では、芸術家として目立った受賞歴もない四男を「余人をもって替えがたい」と重用。外部役員を務めさせ、都の予算を注ぎ込んだ。(略)身内を優遇する事業に約7億2200万円も突っ込んでいたのだから、開いた口が塞がらない》(日刊ゲンダイ2016年10月10日)

 今年1月にワイドショーを見ていたら、石原家の次男・石原良純氏が「トランプは家族を重用しすぎで違和感がある」とコメントしていた。

 良純さん、公私混同はあなたのお父様が都知事時代にずっとやっていたことなんです。

 石原慎太郎を責めるならまずこっちだ。

(一部敬称略)