聞けば聞くほどいい会社
今回提示された会社は、元々ソーシャルゲームの企業であること。新規事業でライター経験者を探しているので今回声かけしたこと。新規事業がどんなものか。長時間労働の是正に力を入れていることや、上場したばかりで勢いのあること……。
聞けば聞くほどいい会社です。本当にそんな会社あるのでしょうか。というか、そんないい会社の求人、すぐ埋まっちゃうんじゃないでしょうか。
私がそんな疑問を抱いているのが電話越しでもわかったのか、男性は言いました。
「これまでも何人かトライしたんですが、残念ながら採用は見送りになりまして」
「え、何がダメだったんですか?」
無知の極みですが、こういうエージェントがついたら、わりと簡単に内定が取れるものだと当時の私は思っていました。その後、書類選考通過にも一苦労する現実を知るわけですが。
「まず、求めるレベルに達していないことですね。今、就職が最も難しいのはDeNAと言われていますが、それより求める基準が高いです」
DeNAが今最も就職が難しい企業ということすら知りませんでした。そんなに難しいのかDeNA。どのくらい難しいか想像もつかないので、この会社のレベルも想像がつきません。
「この人と一生仕事ができるかという基準で見ます。能力はあっても、気持ちのいいコミュニケーションができるかという点で、ちょっと難しいとなることも」
グサグサきます。
「ストレス耐性も見られますね」
あると信じたいです。
「純日系企業なんですが、外資的な面もあり、合わない人も」
外資は大変とよく聞きますが、田舎で働いていると外資系企業の働きぶりを目の当たりにすることがないので、いまいちイメージが湧きません。
いずれにせよ、何か大変な会社のような気がします。でも、あの年収は捨て難い。
それに、そんなに難しい会社なら、ダメ元で受けてみて、東京の高いレベルの仕事というのはどんなものか、知るにはいい機会かもしれません。失うものはもう何もないのです。応募したいと告げると、志望動機を書き加えて職務経歴書を送ってくれと告げられます。
大体の話が終わり、最後に私は尋ねました。
「ところで、どうして今回お声がけ頂いたんですか?」
「第一に記者経験がある点ですね。先方がライティングスキルのある人間を必要としていますから。また、卒業大学が一定以上かどうかも見ています、あとは、正直に申しますと・・・・・・」
男性は言いにくそうにしています。
言ってくれ! どんな現実でも受け止める! そんな気持ちで携帯電話を握りしめます。
「申し訳ありませんが、新聞記者の転職は大変難しいので、よい新天地がご紹介できればと思い……」
だ、だよね~。新聞記者、つぶしがきかないって知ってた! 人脈があるベテランならばともかく、私のように経験が浅い記者ならば尚更です。
こうして、つぶしのきかない、ひよっこ新聞記者に慈善事業のように手を差し伸べてくれたエージェントと、 二人三脚でリア充の巣に乗り込むことを決めたのでした。
キヨシマの転職メモ
一、転職市場にも拾う神がいる。中小エージェントにも目配せしておくべし。
※この連載は、新聞記者として5年働いたキヨシマによる、「脱力系」転職活動記です。書かれていることは全て現在進行形のノンフィクションです。