昨年11月にステージ3の大腸がんが発覚し、「35歳」で「がん」になった「子持ち」の「ライター」、小泉なつみです。
手術と半年間の抗がん剤治療を経て現在は経過観察中の身ですが、先日、術後1年を機に大きな検査をし、結果は異常なし。本当に本当にホッとしたところです。
しかしがんが寛解したといえる4年後まで、ロシアンルーレットばりにハラハラするこんな検査が3カ月に一度のペースでやってくると思うと、心臓が持ちこたえられるのかと暗澹たる気持ちにもなるのであります。
“婚約ブレスレット”の作家 矢野達也さん
そんなさなか、ずっと気になっていた方にお会いすることができました。矢野達也さん(49歳)。「Lynch Silversmith(リンチシルバースミス)」というシルバーブランドの作家であり、2016年に悪性リンパ腫が寛解した方でもあります。
婚約指輪ならぬ“婚約ブレスレット”として私が矢野さんの作品を手にしたのは、2013年のこと。
その時は自分のお気に入りのブレスレットを作った人ががんを患っていたとは想像もしていませんでしたが、2011年に40歳で悪性リンパ腫が判明した矢野さんは当時、今の自分と同じように経過観察中の身だったのであります。
いろいろと不思議なご縁を感じたのと同時に、「おしゃれでカッコよくてタトゥーも入っててバイカーな人も、“がん”になるんだなあ」という、私自身のバカみたいな驚きもまた、取材依頼の一因でした(矢野さんはタトゥーを入れていて、ハーレーに乗っています)。
イケてる若い人には縁遠そうな気がするけれど、がんはそんなことお構いなし。真面目な話、誰にでもがんになる可能性がある、ということなのだ。
「自分にとっては精神面だけじゃなく身体的にも本当に生まれ変わったので、今は第二の人生だと思ってて。正直、あの時がんになって強制的に立ち止まることがなければ、家庭も仕事もどうなっていたかわかりません」
悪性リンパ腫が判明した2011年、矢野さんのブランドは17年目にして岐路を迎えていた。