がん検診がなくなると困る人たちがいる
事実、昨年「英国医師会雑誌(BMJ)」という世界的に権威ある医学専門誌に掲載された米国の研究者らによる論文「なぜ、がん検診は『命を救う』ことを証明できなかったのか─そして我々は何をなすべきか」(BMJ. 2016 Jan 6;352:h6080.)でも、著者らは最後にこう締めくくっています。
「私たちは医療従事者に、がん検診には限界があること、すなわち検診による害は確実だが、総死亡率を減らす効果はないという事実を率直に認めるよう奨励したい。がん検診を拒否することは、多くの人にとって賢明で合理的な選択であるかもしれない」
にもかかわらず、がん検診にはこうした負の側面もあることが、日本ではほとんど知られていません。一般の人たちだけでなくマスコミの人たちまでも、「がんは早期発見・早期治療が大切」「そのためにも、がん検診を受けることが肝心」と思い込んでしまっています。
その一番の理由は、がん検診の関係者がメリットばかりを強調して、デメリットを本気で知らせようとしていないからだと思います。デメリットが広く知られたら、がん検診を受ける人が減るでしょう。そうなると、仕事が減って困る人がたくさんいるのです。
スイスでは乳がんマンモ検診の廃止を勧告
しかし、今や、やみくもにがん検診を推奨する時代ではなくなっています。世界的にもがん検診の効果には疑問符が付き始め、スイスでは乳がん検診(マンモグラフィ検診)の廃止が勧告される事態にまで至っています。「がん検診受診率100%を目指す」という政策などは愚の骨頂です。
事実、がん検診の受診率が上がるにつれて、日本でも深刻な事態が起こっています。「がん患者」がやたらと増えているのです。次回、こうした問題について指摘したいと思います。