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38人中9人から耐性ウイルスが検出された

 ところが、この11月、東京大学医科学研究所の研究グループが、ゾフルーザを投与された38人を対象に調べたところ、9人に耐性ウイルスが検出されたと発表しました。とくに15歳以下の小児で頻度が高く、約3割が耐性化していたそうです。この耐性ウイルスが蔓延するかどうかは今のところわかりませんし、すぐに問題にはならないかもしれません。

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 ですが、問題は新型インフルエンザなどの爆発的流行(パンデミック)が起こった場合です。実は、これに備えて国家備蓄されているタミフルでも、すでに耐性ウイルスが見つかっています。もし、いざというときに「効く薬がない」となると、せっかくの備蓄が無駄になってしまいます。そして、パンデミックが起こった時には、まっさきに抵抗力の弱いお年寄りや乳幼児、重病人などが犠牲となるでしょう。

「薬は不要です」と言える医師こそ本物

 抵抗力のある健康な人であれば、風邪やインフルエンザのほとんどは自然に治ります。もちろん、重症化することもあるので侮ってはいけませんが、今のように抗生物質や抗インフルエンザ薬をむやみやたらに使っていると、薬が効かない細菌やウイルスがどんどん増えてしまって、将来、人類全体が後悔することにもなりかねないのです。

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 日本は健康保険制度が充実しているので、薬局に支払う薬代が安くすむためか、世界的に見てもこうした薬の使用量が多い傾向にあります。タミフルが登場した当初(2001年発売)、日本は全世界の7割を使っていると言われていました。ですが、薬が安く手に入るからといって、薬をたくさん使っていいというわけではありません。薬を使えば使うほど医療費が膨らんで、健康保険制度が維持できなくなる可能性もあります。

 日本人は「薬をもらうために医師にかかる」という意識を持っている人が多く、風邪やインフルエンザで薬を処方してもらえないと、「ケチな医者だ」と思う人も中にはいることでしょう。しかし、その人に薬が必要かどうかを見極め、ときには「薬は不要です」と言える人こそが、良心的で優秀な医師なのです。今回の薬剤耐性菌のニュースをきっかけに、日本人の「薬」に対する意識が変わることを期待したいと思います。