自分が受ける医療を知り、最善の治療を選択したい人に向けて、臨床の最前線にいるトップドクターに専門分野で最新の治療やトピックスを紹介してもらったムック「スーパードクターに教わる最新治療」が発売された。収録されている最新医療コラムを公開。

(全3回の3回目/#1#2へ)

健康食品やサプリメントでがんは消えるのか?

「がんが消えた」

ADVERTISEMENT

「末期がんから生還した」

 ネットを検索すると、こうした体験談を載せたサイトがたくさん見つかる。そこに紹介されている健康食品や民間療法を見て、「自分も試してみたい」と思うがん患者や家族も多いのではないだろうか。

 医学的に効果が検証され、一般の医療機関で行われている「通常治療」に対し、医学的に未検証で、一般には扱われていない療法を総称して「補完代替医療」と呼ぶ。

「有効性が証明された健康食品はありません」

 古いデータだが、2005年に厚生労働省の研究班が公表した調査結果によると、がん患者の44・6%が何らかの補完代替医療を行っていた。「健康食品・サプリメント」が96・2%と圧倒的に多く、「気功」が3・8%、「灸」が3・7%、「鍼」が3・6%だった。健康食品では「アガリクス」「AHCC」「レイシ」「メシマコブ」といったキノコ類が多く、他に「プロポリス」「漢方薬」「キトサン」「サメ軟骨」などが利用されていた。

©iStock.com

 これらは本当に効果があるのだろうか。前出の研究班がネットで公表している「がんの補完代替医療ガイドブック」(第3版)という冊子には、こう明記されている。

「今のところがんの予防や治療、副作用の軽減などに関して、確実に有効性が証明された健康食品はありません」

 医学的に「効果がある」と言うためには、実際の患者で試す「臨床試験」で有効性を証明する必要がある。細胞実験や動物実験で効果があっても、ヒトに効くとは限らないので証明にはならない。

 医学的にもっとも信頼性が高いのが、「ランダム化比較試験(RCT)」だ。何百、何千という患者を対象に、新薬などの治療を試すグループと、ニセ薬や従来の治療を受けるグループとにくじ引きで分け、数ヵ月後、数年後に両者の結果(生存率など)を比較する。こうした検証を積み重ねて、はじめて「効果がある」と医学的に認められるのだ。

 しかし、RCTで効果が証明された補完代替医療は今のところない。では、「がんが消えた」といった体験談は、どう評価すればいいだろう。医学的には、体験談の信頼性はもっとも低いレベルに位置づけられている。なぜなら、本当に消えたとしても、臨床試験で確かめない限り、その療法の効果かどうか検証できないからだ。