自分が受ける医療を知り、最善の治療を選択したい人に向けて、臨床の最前線にいるトップドクターに、専門分野で最新の治療やトピックスを紹介してもらったムック「スーパードクターに教わる最新治療」が発売された。収録されている最新医療コラムを公開。

(全3回の2回目/#1「毎晩飲まずにはいられない……」 お酒に強い人と、アルコール依存症の境界はどこにある?を読む)

保険診療と自由診療はどこが違うのか?

 米国では民間の医療保険に入っていないと、盲腸のような簡単な手術でも100万円を超える高額な治療費を請求されることがあり、中には破産する人もいるという。

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 かたや日本ではがんの手術を受けたとしても、それほど高額な医療費を請求されることはまずない。国の健康保険制度が整備されているおかげで、自己負担額が1~3割ですむからだ。支払いが限度額(1ヵ月9万円前後)を超えた場合は、超えた分が払い戻しされる「高額療養費制度」もある。

 世界中どの国でも、こうした国民皆保険制度が整備されているわけではない。一定の金額を支払えば、誰でも平等に質の高い医療を受けられる国に生まれたことは、恵まれていると言えるだろう。

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病気の治療なのに保険が使えない理由

 このように、日本ではほとんどの医療を「保険診療」として受けることができるが、一部には健康保険が使えない検査や治療もある。これを「保険外診療」または「自由診療」と呼ぶ。どうして、保険が使えない医療があるのだろうか。

 美容外科の場合はわかりやすい。健康保険は原則的に「病気」や「ケガ」に適用されるからだ。美容外科は患者本人の意思で、健常な組織にあえてメスを入れる行為だ。だから医療費が高額であっても、全額を自分で払わなければならないのは致し方ないだろう。

 しかし、病院やクリニックが実施しているがんなどの特殊な治療の中には自由診療で実施され、高額な自己負担が必要なものもある。病気なのに、なぜ保険が使えないのか。それは、国や医学界が有効性や安全性を認めていないからだ。

 新規の医薬品の場合、製薬会社が国から販売の許可を得るためには、3段階の「治験(国の承認を得るための臨床試験)」を実施する必要がある。そのデータに基づいて厚労省で審議され、有効性と安全性が認められてはじめて、医薬品として承認される。そして、「有効性と安全性が認められた医療であって、必要かつ適切なものは保険適用する」のが原則となっている。検査や手術についても同様だ。