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治療費の高い自由診療をグレードが高いと錯覚
10年ほど前、「ドラッグ・ラグ」が大きな問題となった。一部の抗がん剤などで、海外では標準治療として行われているのに、日本では承認が遅れ、使えないことが批判されたのだ。これをきっかけに、有効性と安全性が認められた新規の医療は、できるだけすみやかに保険適用を認めることになった。
つまり裏返すと、保険適用になっていない治療は、たとえ高額であったとしても、「国が安全性と有効性を認めていない」ということなのだ。歯の治療では自由診療のほうがグレードの高い材料が使えるので、保険適用の治療はグレードが低いと感じるかもしれない。だが一般的な医療では、保険適用のほうが、国が安全性と有効性にお墨付きを与えたグレードの高い治療と考えるべきなのだ。
人は中身が同じワインでも、値付けを高くすると、味も高級なものに感じる心理が働くという。それと同じように、治療費の高い自由診療を、最先端でグレードが高い治療と錯覚するかもしれない。だが、自由診療で行われている多くの医療は、まだ国が有効性や安全性を認めておらず、保険適用にできないから治療費が高額になっているだけなのだ。治療選択にあたっては、その点を誤解しないようにしてほしい。
(次回の公開は10/15になります)
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