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1991年のアントニオ猪木vs.磯村尚徳の都知事選を思い出したい

「ひらがなさえ忘れた 84歳石原氏 記憶にない10回 おトボケ劇場」(サンケイスポーツ・3月21日)

 今週おこなわれた百条委員会で披露されたのは新たな真実ではなく、かつての権力者の老いであった。これも小池都知事の狙いだったのかもしれない。

 刺激を与え続けなければいけないイロモノにとって、刹那的な毎日が続く。

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 都知事という存在はなぜこんなに「面白くなってしまった」のか?

 1995年の都知事選で青島幸男が勝ったのも重要だろう。しかし前フリとして異様に盛り上がったのがその4年前の1991年の都知事選。このときが大きい。

 現職の鈴木俊一に対し、元NHKキャスターの磯村尚徳が出馬。自民党の支持が分裂した。アントニオ猪木も出馬の意欲を見せて盛り上がった(結局出馬辞退)。猪木の出馬が何かを変えたのか、内田裕也も出馬し、ドクター中松も選挙デビュー。イベントとしての都知事選はとんでもなく面白くなってしまった。

 なぜ猪木は出馬しようとしたのか。実は1976年に猪木がモハメド・アリと試合をしたとき、磯村氏はNHKニュースの中で小馬鹿にした。猪木はこれをずっと覚えていた。私怨が91年の都知事選に持ち込まれ、政策論争抜きでワイドショーはかなり盛り上がった。現在も続くワイドショー政治の原点がここにある。

 イロモノとしての東京都知事。パンとサーカスなら、サーカスを優先する都知事(それを望んできた都民)。

 小池百合子の"見える化"って、やっぱり劇場化のことだと思う。

小池百合子初登庁のとき ©浅沼敦/文藝春秋