鉄道会社と地元自治体のコスト分担はどうしたのか?
こうした駅名変更には駅名標の変更をはじめ大きなコストと手間がかかるもの。そのため、いくら地元から熱望されても駅名の変更には慎重な鉄道会社が少なくない。例えば、兵庫県はJRの三ノ宮駅。隣接している阪急や阪神は“ノ”のない神戸三宮駅なので、地元からはJRへの駅名変更要望が絶えないという。が、JRサイドはなかなかうなずかない。地元自治体にコスト負担を求めるが、それには神戸市が慎重……というわけだ。
では、松原団地の場合は?
「そのあたりは察していただいて……。ただ、コストの大半の負担を求められるようなことはなかったですよ」(草加商工会議所)
かくして、「松原団地」駅は50年以上の歴史に幕を閉じ、新たに「獨協大学前<草加松原>」駅が誕生することになったのだ。とは言え、古くからの住民は寂しさを感じていたりもするのでは? 冒頭のオバちゃんに聞いてみた。
「そうねえ……。昔は団地住まいはちょっと誇れる感じもあったけど、今じゃ『松原団地駅が最寄りです』ってなんかね。それに学生さんも団地の駅じゃ嫌なんじゃない? 寂しいってことはほとんどないでしょ」
東京近郊にはまだ“団地駅”がある
東洋最大規模のマンモス団地の誇りは、団地エリアの中心に松原団地記念公園として残されている。そもそも、高度経済成長期に相次いで建設された団地も今や昭和の遺物と化し、日本住宅公団も都市再生機構(UR)と改められた。松原団地のごとくマンション群に生まれ変わる例も少なくない。それに東武伊勢崎線も“スカイツリーライン”とシャレた愛称を与えられ、新型特急「リバティ」もデビューするわけで、「団地駅」の改称も時代の流れ、なのである。
ちなみに、東京近郊には光が丘駅(大江戸線)、高島平駅(三田線)、常盤平駅・高根公団駅(新京成線)など“団地駅”はまだまだある。春休み、団地駅巡りで昭和の風を感じてみるのもいいかもしれない。
写真=鼠入昌史