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マイルでゲットすればファーストクラスはお得?

 ただしこれは有償の航空券の場合である。エティハド航空でマイルを貯め、特典航空券を利用する場合の必要マイル数は次のとおりである(成田~アブダビ往復)。

ファーストクラス 23万4576マイル
ビジネスクラス 17万6284マイル
エコノミークラス 7万4248マイル

 ふたたび比率に直すと

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ファーストクラス 3.2
ビジネスクラス 2.4
エコノミークラス 1

 となる。

 有償航空券とくらべて、特典航空券でファーストクラスやビジネスクラスを発券するのが圧倒的に得なことが理解できる。

 以上から見えてきたことは、クルーズトレインを特急の普通車とくらべた場合は割安。国際線のファーストクラスは有償航空券では割高だが、特典航空券であればきわめて割安だということだ。

 日系の大手航空会社で運賃を決めるセクションの担当者を取材したとき、「国際線のファーストクラスはいわばショールームのようなものです」と言われたことがある。これは日系にかぎったことではないが、国際線のファーストクラスに有償の航空券を購入して乗る乗客はそれほど多くない。

 ビジネスクラスからのアップグレードや特典航空券の利用が多くては、占有スペースに見合うだけの売り上げを見込むのは難しい。それでもフラッグキャリアが一部の路線でファーストクラスを維持しているのは、高品質なサービスを提供している場があることが航空会社全体のイメージアップにつながると考えているからだ。

 JR各社がクルーズトレインを運行する事情もそれに似ている。JR九州のクルーズトレインである「ななつ星in九州」は年間の売上高が約5億円だが、宣伝効果は広告に換算すると約200億円におよぶという。JR九州のブランドイメージを向上させたことも考慮すると「プライスレス」であるといえる。

 2015年3月、上野から札幌まで寝台特急カシオペアの最後尾の展望スイートに乗車したことがある。面積は11.5平方メートルだが、広いか狭いかはまったく気にならなかった。列車の最後尾を長時間占有できる贅沢。大沼を過ぎたあたりで部屋に運ばれてくる朝食を楽しみながら北海道新聞を読む贅沢はもう味わうことができない。

 これこそ金銭に置き換えることは難しい。願わくは定期運行でこうした列車が復活してくれることを期待したい。