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みんなが「躁状態」になりたがっている

おぐら いまバブルががキテるのって、ただの懐古趣味じゃないと思うんですよ。

速水 なんだろう、ようやく総括できてきたからかな?

おぐら 僕は、みんなが「躁状態」になりたがっているからなのかなって。

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速水 「鬱時代」が続いたってのはあるよね。日本ではまあデフレ不況がずっと続いているわけだし。

 

おぐら それと、ちょっと前に話題になった「ノームコア」に代表される「ていねいな暮らし」への反動もある気がします。EXILEも普通に黒の無地のTシャツを着ていた時期がありました。なんなら裸のときも。

速水 裸は「ノームコア」なのか問題(笑)。

おぐら シンプルの極地でしょう。飾らない暮らし。

速水 確かにそういう流れはあったよね。『フランス人は10着しか服を持たない』とか「断捨離」とか、本当におしゃれな人は白シャツだけみたいな空気。

おぐら 僕もチノパンとか無地のTシャツたくさん買いましたけど、今は派手な服を着たい気分です。

速水 それで今のチャラい感じになってるのか……。まさに反動だね。

おぐら エチオピアのコーヒーを時間かけて淹れるより、お湯入れて3分焼きそばU.F.O.のほうがいいやって。緑、紫、黄色のダブルのスーツで、ネクタイは赤に青みたいな過剰なほうにいったのも、同じようなもんじゃないですか。

速水 バブル期の焼きそばU.F.O.ってとんねるずがCMやってたなあ。

おぐら とんねるずも昔ダブルのぶかぶかのスーツ着てましたよね。まさに『SUPER FLY』みたいな。

速水 バブル時代を振り返るときに、何もいいところがなかったかのように煙たがってきたけど、いまはちょっと見直すタイミングなのかも。

平野ノラ ©時事通信社

おぐら 地味を巡る競争って、なんかスカッとしないんですよね。

速水 「シンプルライフ」や「ノームコア」って、一見アンチ消費社会風に見えるんだけど、多分そうじゃなかったんだよね。

おぐら そうですよ。「必要なのはセンスです」って言った瞬間に、生まれ育ちで勝負が付いてしまうことも多いし。

速水 どうしたって、生まれはロンドンで5歳の時に渋谷区に引っ越してきて幼なじみがリップスライムみたいな奴が勝つレースになるよね。逆に言えば、バブルの時代って、誰でも金を出せばDCブランドのスーツを着ておしゃれだって言い張れた民主的な時代だったんだよね。

おぐら お金のもとに平等、みたいな。それでいま、まさに「民主的かどうか」を巡って世界が二極化している。「ノームコアのていねいな暮らし」派と、過剰に着飾る「真っ赤な服着てソバージュで、真っ赤な口紅」派と。

速水 格差が固定されて先行者が優遇される社会と、それを打ち壊そうとする勢力。つまり、前者はヒラリー支持者で後者がトランプ支持者みたいな構図ではある。ヒラリーは、一見リベラルのように見えるけど、実はトランプが民主的だったから支持されたわけだし。