EXILE THE SECONDの1988年感
速水健朗(以下、速水) 最近、毎日新聞に「今20代に80年代が人気になってるんだけど、理由についてコメントして」っていう取材を受けたのね。
おぐらりゅうじ(以下、おぐら) そんなような話、速水さんとしたばかりですね。バブルネタの平野ノラがブレイクしたり、桐谷美玲が出演しているYモバイルのCMシリーズが80年代ネタを散りばめたり。綿矢りさの新刊『私をくいとめて』の表紙イラストが『ハートカクテル』のわたせせいぞうだったりとか。80年代、もしくはバブル文化のリバイバルをあちこちで見かけます。
速水 毎日新聞だけでなく『VOGUE JAPAN』も1980年代の特集を準備しているらしいし。
おぐら ファッションでいえば、EXILE THE SECONDのニューシングル『SUPER FLY』のビジュアルも、まさに80年感たっぷりで。
速水 (PVを観て)本当だ、肩パッド入った原色ダブルスーツだね。1988年感がある。
おぐら 1年単位で、ピンポイントに特定できるんですね。
速水 バブル期は、女性で言えばもちろん平野ノラやベッド・インが着ているようなボディコンスーツ、ブランドで言えばピンキー&ダイアンが定番だったわけだけど、男はダブルのスーツでしかもイタリアンソフトスーツのパステル系が定番。
おぐら アイコンとしては分かりやすいですけど、みんながそういう格好していたわけじゃないですよね?
速水 もちろん、一部のヤンエグだけだよ。
おぐら ヤンエグ……。「死語」という言葉すら死語になったいま聞くと、もはや新鮮です。
速水 一応説明しておくと、「ヤングエグゼクティブ」の略で、いまだったら休日に短パンにジャケットにサングラスをかけてるような層のこと。
おぐら VERY夫じゃないですか。もっと普通の人たちは当時、どんな服を着てたんですか?
速水 イタリアンブランドのトラサルディーのジーンズに「MICHIKO LONDON」のトレーナーをタックインして着てた。
おぐら いま原宿を歩いていても、そんな違和感ないですね。去年、ラフォーレミュージアム原宿で「ミチコ ロンドン コシノ(MICHIKO LONDON KOSHINO)」30周年記念のファッションショーやってましたし。
http://www.fashionsnap.com/news/2016-10-07/mlk30/
速水 当時の中学生はみんなこんな感じね。
New Edition 『Mr. Telephone Man』
https://www.youtube.com/watch?v=YTdxdr9pNnw
おぐら New Editionだ。「Mr. Telephone Man」は1984年のリリースですね。
速水 一回りしてかっこよく見える。でもバブルっぽいとかゴージャス志向、または80年代っぽい感じは、世界的なポップミュージックの潮流っぽいよ。去年の振り返りを音楽評論家の宇野維正さんとの対談でしていたらザ・ウィークエンドとかK-POPとかでは、ゴージャスな成金趣味のPVが増えたって。もちろん、アメリカでは、80年代末=バブル経済ではないけどね。
おぐら 日本におけるバブルのパロディは、はじめた時期も早かったし、クオリティでもベッド・インが頭ひとつヌケてると思いますよ。彼女たちのインタビューを読むと「ハァ〜〜ン♥ マン激すぎて、心の“億ション”がおっ勃っちゃった♪」とか、活字にしてもいちいち気が利いてる。
http://youngguitar.jp/interviews/201608-bed-in
速水 それを子どもにまでウケる平野ノラが全部持っていった感がある。でも、ベッド・インもブレイクしてきてる。3月19日に結構大きな会場でやった「おギグ」観に行ったけど、めちゃ盛り上がってた。バブルの聖地ギロッポンで開かれた「MOGITATE! 元気が出る プッツン5ショー」ね。
おぐら 『鶴ちゃんのプッツン5』見てた〜。
速水 トレンディドラマのパロディやったりSHOW-YAとか工藤静香を演奏したりしてるんだけど、観ている側っておそらくそれをリアルタイムで通過していない世代なの。20代、30代。
おぐら いまのバブル文化の熱心なフォロワーって若いんですよね。だから時代考証よりもノリが大事で。それをあれは90年代じゃない、1980年代の半ばだとか、元ネタにツッコミを入れてる人もいますけど。
速水 リアルバブル世代はベッド・インは観に来てないし。
おぐら おギグの会場にいたバブル世代の観客って、速水さんくらいだったでしょう?
速水 だから俺だってバブル当時はまだ中学生だって!