文春オンライン

2017/04/02

genre : エンタメ, 読書

読者から森さんへの質問

■『永遠の出口』、そして最新作の『みかづき』、どちらも船橋から千葉あたりが舞台の小説でした。このエリアでの制作の手がかりとなったエピソードなどあれば教えてください。(50代・男性)

森 もともと生まれたのは東京なんですが、幼稚園くらいから千葉にいたんです。小学校くらいの時は私にとって八千代台は都会だったんですね。中学生くらいになると船橋が都会になって。なので愛着があるんです。やっぱり自分がその土地を知っているかどうかはすごく大きいので、『みかづき』はあえて自分の記憶にある街を選んで書きました。

■児童文学を書くときに、読者層をどう意識しますか。執筆者として大人向けの小説との違いはどこにあるのでしょうか。(30代・女性)

 一番大きいのは主人公の年齢ですね。13歳の主人公だったら、やっぱり13歳の子が読んで面白いと言ってもらえるものであってほしいと思いますし。それと、子どもだとあまり難しい言葉は分からないし、比喩にしても「あのスペインのコスタ・デル・ソルのなんとか」と言っても分からないので(笑)、子どもの世界にある範囲での比喩にするといったことは考えますね。あまりそれ以外は意識しないんですけれど。

■小説を書く時に何か音楽をかけたりしますか。作品によってテーマソングを決めて聴いたりされているのでしょうか?(20代・女性)

 特別なケースとしては『アーモンド入りチョコレートのワルツ』の時にはそれぞれの表題作の音楽をずっとかけていたんですけれど、基本的には私は無音です。

■10代や20代のうちに読んでおいたほうがいいと思う小説は?(10代・女性)

 それは個々によって、それぞれの好みによると思うんですけれど。私は「ムーミン」の原作のシリーズが大好きでした。あれは年齢によっていろんなとらえ方ができるんです。まず10代のうちに読んでおくと、また大人になって読み返した時に、感じ方の違いも分かっていいのではないかと思います。

■『みかづき』を読んで、これからの日本の教育について考えさせられました。森さんは今後教育界がどのように変わっていけばいいと思われますか。また一郎のような取り組みにも興味を持ったのですが、教育関係の仕事でもなく、年頃の子供がいるわけでもない人間にとって何かできることはあるのでしょうか。(50代・女性)

 私自身の思いとしては、やっぱり子どもたちがみんな、なるべく平等な土台の上で教育を受けられるようになってほしいなというのがありますね。学校教育は公平かもしれないけれど、それ以外の部分でどんどん差が出てきてしまっているので。それをどうにかしていくというのが一番の課題ではないかと思います。お子さんがいない方や、教育関係に携わっていない方でも、教育支援団体、学習支援団体、あるいはこども食堂にしてもそうですけれど、たぶんどんな地域でもそういう取り組みを行っているとは思うので、協力するなり、いろんな面での援助をしようと思えばできる場はあるのでは。

■森さんの短篇が大好きです。実体験が元になった話はありますか。(30代・女性)

森 さきほどの「異国のおじさんを伴う」や「夜の空隙を埋める」のように、ふとしたきっかけになったものはありますね。でも、現実そのものを書くということはないです。

■保護犬の問題や、教育問題などを取り上げていますが、今の世の中で気になることは何ですか。(40代・女性)

 東京オリンピックが終わってから、日本はどうなっていくのかなっていうのが、ヴィジョンが全然浮かばなくて。ざっくりとした答えになりますが、気になりますよね。あと、トランプが大統領になったときには、ブッシュの再選以上の衝撃を受けましたし、ポピュリズムの波がどこまで広がっていくのかも大変気になりますし、難民問題も目が離せません。

■森さんはどんな中学生でしたか。私は私立の女子中に入学して、小学生の時に比べて似たような家庭環境の子が多くて、大きな事件も起こりません。私は森さんの小説が大好きですが、もう来年高校生になるのにバイトも禁止で、恋愛も万引きみたいな事件も経験がなくて、このままフワフワと大人になってしまうのかとちょっと焦っています。(10代・女性)

 私たちの頃って、中学校が本当に荒れていたんですよね……。という感じです(笑)。中学生って、たぶんギリギリ親というか家に縛られている時代なので、あまりいろんな経験がなくても、それは普通のことじゃないでしょうか。高校あたりからもう少し、学校と家以外の場所が生まれてくるのかもしれないし。恋愛するのかもしれないし、アルバイトも解禁になるかもしれないし。高校にいったらいろんな経験を積んでいくものだと思いますよ。万引きはやめておこうね(笑)。

■10代の娘がいます。森さんの小説を読むと、子どもたちに自分はこう見られているんだと、ハッとさせられることがよくあります。思春期の子どものヒリヒリした敏感さを自分は忘れてしまっていると思わされます。例えば『永遠の出口』ではホテルニュージャパンの火事が出てくるので1982年前後という設定ですが、スマホや携帯が登場するずっと前の話なのに、とても現代的です。子供を取り巻く環境は随分変わりましたが、最近の子供は変わったなと思うことはありますか。(40代・女性)

 携帯とかスマホとか、ツールは変わっていくんですけれど、実際に学校とかに行って子どもたちに会うと、そんなに生身の子どもたちは変わっていないような気もするんですよね。ただ、最近の子たちって、はっきりとものが言えるし、大人に対しても、昔みたいに大人は絶対という信頼もなければ期待もない分、フランクに接することができる。昔は先生は神様、みたいな感じだったけれど、今はまったくそんな感じではないみたいで、それは大人としては情けないことかもしれないけれど、でも子どもたちを自由にしてくれていることでもあるなと感じます。

■森さんの小説は、日本が舞台でも異国の香りがするような気がします。『つきのふね』のウィーンからの手紙、『アーモンド入りチョコレートのワルツ』の謎のフランス人。森さんは海外のどこの国が好きですか。(30代・女性)

 ヨーロッパの田舎のほう、都会よりは自然のあるところが好きです。もともとスペインがすごく好きで、スペインで暮らしたいと思っていたんですよ。でも最近、スペイン語ができないから難しいかなって、ちょっと弱ってきているんですけれど。好きなのはコスタ・デル・ソルとかアンダルシア地域。ちょっとイスラムの文化と混ざったようなところで、すごく天気がよくて、人が良くて、食べ物が美味しいんです。あとはマルタが好きですね。風景がとても。

■『みかづき』というタイトルの由来のくだりが印象に残りました。森さんの小説には宇宙の話がよく出てきますが、森さんは天体観測や星空観察がお好きですか。好きな星座はありますか。(40代・男性)

森 好きな星座はあまりありませんが、一時期、天体博物館のスターウォッチングスタッフになったことがあります。市民に無料で開放して、大きな望遠鏡で星を見てもらう際に案内をするボランティアみたいなもので、友達と一緒にやりました。1年間くらいかな。そういう経験が『永遠の出口』の天体部などに反映されていると思いますが、興味があるのかと言われたらそんなこともない。でも宇宙の夢はよく見ます。三日月から満月になっていくまでが空にパーッと広がる夢とか。特に好きな星座はないんですが、私はおひつじ座です、ということで(笑)。

■『永遠の出口』で、主人公とお父さんはO型、お姉ちゃんとお母さんはA型で、とてもそれっぽい感じがしました。森さんの血液型は何型ですか。血液型占いは信じますか。(30代・女性)

 私はO型で、うちの家族3人全員O型だったんです。みんなすごく大雑把でした。占いはどこまで当たっているのか分からないけれども、傾向としては何かあるのかなとも思います。A型の男性に惹かれがちだけれど、うまくいくのはB型とか(笑)。

10年間の集大成。最後の短篇は朝、目が覚めてすぐに思いついた──「作家と90分」 森絵都(後篇)

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