うつ病や摂食障害から表面化することも
「また、女性の発達障害の場合、思春期に体調不良が強く出るのも特徴のひとつです。
特にアスペルガーの女性の場合は、夜眠れないなどといった睡眠障害や、吐き気や腹痛、便秘などの胃腸の異常、原因不明の発熱、特に重労働をしていないのに、朝布団から出られないほどのひどい疲労感などの体調不良に悩んでいることが少なくありません。
詳細は明らかになっていませんが、アスペルガーの女性は、ホルモンの関係で思春期にからだが変わってきます。体格もふくよかになります。体質的に神経系の機能不全が起こりやすい傾向もあります。
少し前に『片づけられない女たち』という名前でADHDが取りざたされましたが、片付けられないのは自分が悪いのだと自責的になり、うつ病と間違われるケースもあります。
頻繁に体調を崩すために、病院へ行っても『心身症』と言われ、対症療法的に薬を飲むのですが、なかなかよくならず、何年も経ってからやっと発達障害に気づくこともあります。
さらに、アスペルガーの場合、考え方のこだわりや感覚面のかたよりなどから、食事の習慣が乱れ、摂食障害を発症することも。女性の発達障害は、この他にも境界性パーソナリティ障害や性同一性障害などの二次障害を起こしていることもあります」
診断基準が女性に合っていない
「そもそもの問題として、発達障害の診断基準が女性には合っていないのではないかという説もあります。
アスペルガーは、もともと男子の発達障害として認識されていました。ADHDについても幼少期には男子が多く、女子の3~5倍という比率で研究されてきた歴史があります。成人期になるとなぜか1:1になりますが。
診断基準が男性向けになっているために、基準が該当する状態にならず、診断が出ない場合もあります。
また、女性の場合は、アスペルガーとADHDも混同される場合がしばしばあります。
女性の発達障害で特徴的な『片付けられない』ということを例に取ると、こだわりが強く、持ち物を整理するのに時間がかかって、その結果部屋が散らかっているように見えるアスペルガーの場合と、不注意の特性に対処するために、使えそうなものは全て持ち歩いたり、いつも同じ確認行動をするなど独特の行動パターンがこだわりの強さに見えてしまうADHDの人の場合です。
前者はADHDと診断され、後者はアスペルガーと診断されたりもします。同じ発達障害でも、治療法は異なるため、病院へ通っているのに心身の不調がよくならないというケースもあるのです」
発達障害にも性差医療を
「性差医療という言葉があります。女性も男性も発症するメカニズムは同じですが、精神的、身体的に異なっているために症状として表れる形が異なり、症状で診断する精神科的診断では紛らわしく、誤診も起こります。
性差医療が正しく理解されてこそ、発達障害が適切に診断され、適切な治療が受けられるようになるではないでしょうか」