発達障害は、全般的に女性よりも男性のほうが多いと言われています。男性は女性の4倍いるという説もあります。
しかし、実際は女性にも発達障害は少なくないとどんぐり発達クリニックの宮尾益知先生は言います。女性の発達障害がなぜ見過ごされてしまうのか、話を伺いました。
「特徴」があらわれにくい
「発達障害は男性に多いということは以前から言われてきたのですが、長年診察を行っていると、女性の発達障害も決して少なくありません。
女性の発達障害が見過ごされてしまう理由として、一番大きいのは、その特徴が男性ほど明らかにはあらわれないということがあります。
アスペルガーは、こだわりの強さやコミュニケーション面の困難さを特徴とする発達障害ですが、男性の場合は幼少期からその傾向が目立つ一方で、女性の場合は特徴が目立たず「人間関係の悩み」として、その特徴が現れてきます。
例えば、女性同士のグループでうまくいかず孤立してしまったり、ガールズトークについていけないなどです。
アスペルガーの女性は、本人に悪気がなくても失言や暴言などが出てしまったり、また女性特有の非言語的なコミュニケーションが苦手なために、人の表情や仕草から暗黙の了解を知ることができないからです」
特徴は「おしゃべり」「予定がいっぱい」
「ADHDの場合は、男性だと幼少期からそわそわと落ち着かない『多動性』と、手が出やすいといった『衝動性』がよく現れますが、女性の場合はこれらが見られず『おしゃべり』『いつも予定がいっぱい』といった特徴が現れます。
またミスも多いのですが、幼少期にはおっちょこちょいで済んでいるものの、大人になって『失礼だ』と言われることが増えて、ADHDの可能性に気づく場合があります。
これには、男女の脳の働きが関係しているとも言われています。発達心理学者のサイモン・バロン=コーエンは、女性の脳は共感を、男性の脳はシステム化を求める傾向があることを仮説として唱えています。
これはあくまでも統計による仮説ではありますが、生活上でも男性は分析を求めがちな理系傾向、女性は共感を求める文系傾向が高いのではないでしょうか」
コミュニケーション力が高いゆえに見過ごされる
「私が診察を行っていても、女性は男性に比べて言語能力やコミュニケーション力が高いと感じています。そのため、発達障害というよりは個性と捉えられて見過ごされている場合が多いのです。
例えば、アスペルガーの場合、男性では会話のすれ違いが幼少期から出るため、人間関係をそもそも築けない人がいる一方、女性はある程度の社会性やコミュニケーション能力があるために、10代になってから困ることが増えてきます。これは、女性同士のガールズトークが複雑になってくる時期と重なっています。
先ほども述べたように、女性は10代を過ぎると非言語でのコミュニケーションを重要視するようになり、話が複雑になってくるため、テンポよく会話を受け答えすることや、恋愛・ファッションなどの他愛ない話についていくことができなくなってくるのです」