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クリエイターのみなさんが夜な夜な集まる、中目黒の不思議なお店に行ってみた

東京新名所・中目黒「PAVILION」に潜入!

2017/04/09
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 この春、ちょっぴり好奇心を刺激される出会いを求めているあなたにオススメの店が中目黒にある。名前はPAVILION。展示場などを意味する名前のこの店には、第一線で活躍するクリエイターやクリエイティブ業界のみなさんが夜な夜な集まってくる。

©鈴木七絵/文藝春秋

 例えば、ある日のPAVILIONでワイングラスを傾けていたのが、森美術館館長の南條史生さん。「今日は上海のお客さんをお連れしました。アート作品が並ぶ入り口がおもしろいし、見せたくなるものがたくさんありますからね。ほかの店とはひと味違う雰囲気なので、クリエイティブ業界の方には特に好評です」。

森美術館館長の南條史生さん

 そう南條さんが話すように、PAVILIONにはエントランスへのアプローチをはじめ、店内外のさまざまな場所にアート作品が展示されていて、これが唯一無二の雰囲気を生み出している。

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右上の黒いオブジェは名和晃平さんの作品 ©鈴木七絵/文藝春秋

 例えば、バーカウンターの上には、黒い巨大なミラーボールのようなオブジェが浮かんでいる。これはガラスビーズで鹿を覆った作品などで知られる、名和晃平さんの作品。ちなみにこのオブジェ、実は意外なもので出来ているのだが、それがなにかは店を訪れて確認してほしい。

あるドアのうしろに隠されたconixの作品 ©鈴木七絵/文藝春秋
長テーブルの上にはベスパが! ©石川博也

 長テーブルの上にディスプレイされているのは、イタリア製のスクーター、ベスパ。なんと一台そのままテーブルの上に吊り下げられているのだ。この作品はシンガポールのマーライオンなど屋外のモニュメントを取り込んで部屋をつくり、実際にホテルとして営業するなどのインスタレーションで知られる、西野達さんによるもの。

 この作品について「ベスパがぶら下がっているのは、けっこうビックリするよね。こういう大胆な仕掛けがあると、若いクリエイターが集まってくると思います」と話すのは、ミュージシャンの藤井フミヤさん。

左から/PAVILIONオーナーの遠山正道さん、ミュージシャンの藤井フミヤさん、湯川さん、フォトグラファーの川添文子さん、AR三兄弟の長男で開発者の川田十夢さん、美香さん
街灯が男女のトイレを貫くこの作品も西野達さんが手がけている ©鈴木七絵/文藝春秋
音楽家の渋谷慶一郎さん(中央)、映像作家のジュスティーヌ・エマさん(左)

手がけているのは、みんなが知ってるあの会社

 実はこのPAVILIONは、Soup Stock TokyoやPASS THE BATONなどを展開するスマイルズが手がける新たな業態の店である。これまでも次々と新しいカルチャーや価値観を提案してきた同社。社長の遠山正道さんによれば、中目黒の人たちはもちろん、世界中の人たちがわざわざ行きたくなる店、東京らしい店にしたいと思い、振り切った店作りを心がけたという。その結果、辿り着いたのがアートをテーマにした店だった。

N.HOOLYWOODデザイナーの尾花大輔さん

 以前から遠山さんはアート関係者から“海外の作家(アーティスト)が来日した時に案内できるような、アート作品のあるレストランが東京にはない”と聞いていて、“じゃあ自分たちが”ということで今回それを実現したのだという。店内には前述のインスタレーションのほか、conixや川島小鳥さんの作品など、スマイルズが会社で保有するアート作品も数多く飾られている。

アートディレクターの秋山具義さん。うしろに展示されているのはコーエン・ヤングの作品

 また毎晩のように店に顔を出す遠山さんも特別な雰囲気を作り出すためにひと役買っている。率先して知り合いのアーティストやクリエイター同士を引き合わせたり、みんなで飲もうとその場で提案するなど、顔の広い遠山さんだからこそできるコミュニケーション術を繰り広げているのだ。

 AR三兄弟の長男で開発者の川田十夢さんは「アート作品が並ぶ直線のアプローチを通って店にたどり着く間に、魔法をかけられているかのよう。お店の中もアート作品が大胆に飾られた非現実的な雰囲気で、演劇空間や作品の中に入っている感じがあって。特別な空間を共有している感覚があるからこそ、お店にいらしているほかのお客さんともすぐにつながれる。そんなマジカルな場所だと思います」と話す。実際、川田さんはこの店で藤井フミヤさんとつながることができた。

告白したくなった男女のために、ユニークなラブレターも用意されている ©鈴木七絵/文藝春秋

 この店が特別な理由はほかにもある。例えば、メニュー名。「骨付もも肉[黒姫鶏] 信州の里山ですくすくと育った箱入り娘です 1本」や「産直野菜のピクルス -野菜たちは着くやいなや漬けられた-」「うしろめたさが詰まったTKG(卵・からすみ・いくら)」などユニークなネーミングに興味をそそられる。さらには「ROMAN」と呼ばれるお店専用の通貨があったり、「男は恥ずかしく女は嬉しい読みもの」と題されたラブレターや、テーブルの上に置かれた空の一輪挿しのための「一束の小さな小さなブーケ」が用意されているなど、さまざまな仕掛けが楽しい。常になにかおもしろいことが起きそうな雰囲気があるし、実際に起きてしまうのがこの店なのだ。

建築、デザイン業界のみなさん。左手前から時計周りに/プロダクトデザイナーの倉本仁さん、建築家の長坂常さん、デザインビジネスプロデューサーの天野譲滋さん、プロダクトデザイナーの石橋忠人さん、建築家の窪田茂さん、建築デザイナーの山本和豊さん、遠山正道さん。

 まさにPAVILION自体が、その夜集うメンバーによって生み出されるインスタレーションのようなもの。自分もある意味作品の一部として、今日はどんな夜になるだろうかとワクワクできるのがこの店の良さであり、だからこそ、毎夜、多くのクリエイターが大小さまざまな刺激を求めて集まってくるのである。

PAVILION
東京都目黒区上目黒1-6-10 中目黒高架下
03-6416-5868
<月~金>11:30~15:00/17:00~26:00(L.O. 25:30)
<土・祝日>11:30~26:00(L.O.25:30)
<日>11:30~23:00(L.O.22:30)
無休
http://www.pavilion-tokyo.com

写真=石川博也

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