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カルビー7期連続増収増益を支えた「フリーアドレス」オフィス

「フリーアドレス」オフィス、本当の実力

2017/05/08
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 出社したら、自分の机が無い。

 昭和世代の勤め人なら青ざめそうな状況だが、働き方改革が叫ばれる今、企業にも働き手にも、昔ながらのオフィスを構える意義は大きく揺らいでいる。その揺れ幅の中で、経営効率化のマジックワードのように唱えられているのが「フリーアドレス」だ。

 まずは現在の経営体制になって7期連続、8期目の2017年3月期も増収増益を目指すカルビーの、丸の内本社オフィスを覗いてみよう。

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左側がソロ席。右側がコミュニケーション席。座席が決まっている社員はいない。

「居心地のいいスペースにはするな」

 カルビーの会長兼CEOに松本晃氏、社長兼COOに伊藤秀二氏が就いたのは2009年6月末のこと。

「赤羽にあった旧本社から移転してオフィスが変わることは、現体制の役員の就任と同時に公式に通達されました。新体制発足後の翌月早々、新しいことに寛容なメンバーを募って9名のプロジェクト・チームを発足させました。2010年1月の移転完了が必須でしたね」

 と、当時プロジェクトの事務局を務め、現経営企画・IR本部長付部長の石井信江氏は述懐する。

「どんなオフィスにするかコンセプトを考えるよう、松本と伊藤からは宿題で出されただけで、経営陣がフリーアドレスにとくにこだわっていた訳ではないんです」

 つまり、オフィスを変えるという決断はトップダウン型ながら、フリーアドレスの採用はプロジェクト・チームの側からの提案だった。

 経営陣が要件として出した注文は、それほど多くない。

「松本からは、人間はタテでなくヨコに動く生き物だから、ワンフロアで横に広いスペースを有効に使え、と。他には、仕切りは基本、作ってはダメ。会長室も社長室も不要。答えは現場にあって、オフィスは知恵を寄せ合うところだから、快適で寛ぎやすい居心地のいいスペースにはするな、と」

当時新オフィスのプロジェクト・チームのメンバーだった石井信江さん。