いまから24年前のきょう、1993年4月24日、栃木県日光市にテーマパーク「東武ワールドスクウェア」が開園した。東武鉄道が建設した同園には、国内外の名建築・建造物が、本格的なミニチュアにより再現されている。現時点で展示されている模型は、ユネスコの世界文化遺産に登録されている46件を含め、21ヵ国102点におよぶ。
もっとも新しい模型は、やはり東武鉄道が建設した東京スカイツリー。本物より2年早い2010年に完成し、既設の東京タワーの模型とともにそびえ立つ。模型とはいえ高さは約26メートルとかなり大きい。東京駅の模型も、実物の復原工事に先駆け、開園当初より戦災で焼けたドーム屋根を再現した形でつくられている。海外建築では、米ニューヨークのワールド・トレード・センターの模型は、実物がテロ事件で崩壊したいまとなっては、往時をしのばせる貴重な資料ともいえる。
筆者は、15年ほど前、同園の一部模型を製作した工房を取材したことがある。そこで聞いた話によれば、製作にあたっては、まず実物を最低でも2回はロケハンし、細かな部分をじっくり調べることに重点を置いたという。また、国内の建物については国会図書館に所蔵されている図面を参照し、それを模型のスケールである25分の1に縮めて新たに設計図をつくったとか。
くだんの工房が手がけたうち、京都の清水寺のロケハンにあたっては、寺側の好意で、一般には公開されていない支柱の中まで見学させてもらうことができたという。おかげで模型では、複雑な支柱の組み方まで再現されている。その屋根を支える柱も一色で塗りつぶすのではなく、日に焼けて白っぽくなっている部分とそうでない部分を塗り分けるなど、じつに細かい。
清水寺の模型では、舞台の奥にある火鉢の線香に赤く火がついていたりと、製作者の遊び心もうかがえる。同園ではほかにも、たとえば中国・北京の故宮の模型では、映画『ラストエンペラー』の撮影シーンが再現されるなど、随所で人形を使ったドラマチックな演出がなされている。そんなところまで注意して見ていくと、あっという間に時間が経ってしまいそうだ。もうすぐゴールデンウィーク、家族で足を延ばしてみてはいかがだろうか。