男子禁制の秘密の会議

 それはマリーンズ内では「秘密の花園会議」と呼ばれている。球団事務所内のとある会議室で週に数回、女性スタッフたちだけが集まる。場内アナウンス担当、球団チア、営業職員とポジションは別々だが社内選りすぐりの8名。下は20歳の妙齢の女性から上は40代後半の美魔女まで。彼女たちは延々と議論を重ねる(大体、1回の会議で2~3時間)。私も好奇心から入ってみたいと思い、何度か覗き見を試みたが、厚いガードに阻まれた。それは「男子禁制」の秘密の会議である。

「女性ファンに注目をしてもらうためには、女性のアイデアで作られたファンサービス企画を女性のために行う必要がある!」

 山室晋也球団社長の下、女性ファン獲得大作戦の一環として立ち上がったプロジェクトチームがこの花園会議である。スタートは2014年。いわゆる「カープ女子」という言葉が、ちまたで頻繁に聞かれるようになった時期。そして、生み出されたのが「スーパーレディースデー」というイベントデーだった。年に2回、ターゲットを女性に絞り、様々なファンサービスを展開するというもの。マリーンズファンクラブの女性ファンの比率は3割。女性ファンを増やすことで、球場を華やかに、そして盛り上げようという一大プロジェクト。

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 初めて開催された2014年もその試合に限り男女比率が6:4となるなど成果を挙げ、この3年間、定着してきた。その中で目玉企画と言われるのが「イケメン5」。マリーンズに在籍している選手の中でのイケメントップ5を女性に投票してもらおうという企画で、そのタイトルもビックリするほどベタ! しかし、これがここまで非常に盛り上がり、定着している。今年も3月中旬から4月上旬まで、1万7000人以上のマリ女(マリーンズ女子)からの投票があった。

 この投票に関しては男子諸君も興味津々。毎年、この時期になると「イケメン5は誰か?」、「最下位は誰か?」、「オレとアイツではどちらが上か?」、「なんでアイツが上位に入るのか?」などの選手たちの問い合わせが私のところに届く(お答えしていません)。まさに男子校状態である。

イケメン5、荻野貴司が3年連続で1位に

 ちなみに栄えある2017年イケメン5は次の通り。女性総投票数17,223票。1位荻野貴司外野手2,740票。2位佐々木千隼投手2,025票。3位吉田裕太捕手1,883票。4位平沢大河内野手1,724票。5位成田翔投手1,688票。そして、惜しくもイケメン5入りが出来なかったが、トップ10入りしたのは次の通りだ。6位伊志嶺翔大外野手1,430票。7位唐川侑己投手598票。8位鈴木大地内野手393票。9位原嵩投手374票。10位石川歩投手337票。

イケメン5で3年連続1位に輝いた荻野貴司 ©梶原紀章

 特筆すべきは1位の荻野貴司外野手。なんと、この投票を始めて3年で3連覇! しかも結婚発表後も勢いが衰えないから、男としては不思議で悔しい(通常、プロ野球選手は結婚を発表すると女性人気が落ちる傾向にある)。これに関して私の方から、球団の「秘密の花園会議」に出席する女史たちに結果分析を要求すると次のような回答が返ってきた。

「昭和の香り漂う古きよき時代のスター感!」、「爽やかな笑顔と関西弁が素敵!」、「イケメンなのに謙虚」、「謙虚なインタビューの受け答えや、ファンサービスへの丁寧な対応&優しい笑顔が女子のハートをがっちり掴む」、「爽やかな笑顔とファンへの優しい対応」、「盗塁した時が最高にかっこいい!」、「笑顔がとにかく爽やか! 俳優のような顔立ちで老若男女から憧れの存在」、「はにかみ笑顔と端正なマスクのイケメン」、「照れたときの笑顔がキュンとくる」、「ルックスのみならず、爽やかさ、優しさ、笑顔、全ての魅力を兼ね備えている」。

 なんとなく分かったような、分からないような回答。男は40代からと燃える私にとって、残念ながらあまり参考にならなかったが、いずれにせよただイケメンなのではなく謙虚さや優しさも大事な要素となっているよう。ちなみにではあるが荻野選手の体脂肪率は10%あるかないか(本人にさきほどメールをして聞きました)。とにかく脱いだら、凄いんです(お見せはしませんので悪しからず)。

ルーキーの佐々木千隼も大健闘

 そしてもう一つ注目をすべきなのは2位に入った黄金ルーキーの佐々木千隼投手。昨年のドラフト会議で5球団競合の末、入団をした選手がいきなり2位にランクインである。こちらも同様にコメントを求めると次のような回答が戻ってきた。

「好青年風! 高身長で、スタイルが良いのもポイント高」、「試合中の真剣な顔と、笑った時のあどけない笑顔のギャップがかわいい!」、「フレッシュ」、「長身&目鼻立ちクッキリのルックスにドラフト1位という期待値もプラス」、「くっきりした顔立ち。笑顔と真剣な表情のギャップ!」、「照れた顔が可愛い!」、「まっすぐ前を見つめる眼差しが素敵」、「フレッシュマンとは思えない、精悍なキリッとした顔立ち」、「こんな息子がいたらいいなー。母さんイチ押しイケメン!」、「シャイで寡黙な感じと、たまに見せる笑顔のギャップにキュン!」。

ルーキーでいきなり2位にランクインした佐々木千隼 ©梶原紀章

 こちらはルーキーへの期待感なども込みであることがよく分かる。ただ、若きイケメン男子の存在は球団広報にとっては戦略上、とても大事。今後も女性の気持ちを意識しながらの広報展開が必要になるだけに、大きな参考材料としないといけなそうだ。

 そんなわけで、女性たちがあれこれ考え、作り出したマリーンズのスーパーレディースデーは5月21日の楽天戦(ZOZOマリンスタジアム、14:00試合開始)と7月17日のオリックス戦(ZOZOマリンスタジアム、17:00試合開始)で実施。当日はイケメン5の私服姿の写真が載っている冊子やレディースTシャツが配られるなど、様々な女性ファン向けの企画が用意されている。

 まだ、ファンサービス企画の詳細は女子たちから明らかにされていないので、ここでは紹介できないが、会議で残念ながらボツ(NG)になったアイデアの一部を入手することが出来た。「ノースリーブで筋肉を強調した選手の写真の紹介」、「ハイタッチじゃなくて、頭ポンポンタッチ」、「ドライブで助手席に乗ってる目線で話しかけてくれる」などが持ち上がったそう。女性たちは、いったい、なにを考えているのやら……。とにかく本業とは別に毎週、何時間もかけて考え、作り上げられた女性たちによる女性のためのイベントが成功することを願っている。

梶原紀章(千葉ロッテマリーンズ広報)

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※「文春野球コラム ペナントレース2017」実施中。この企画は、12人の執筆者がひいきの球団を担当し、野球コラムで戦うペナントレースです。