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「女性は嫌がると妊娠しやすくなるから気をつけろ」

 資料室でのセックスでも、広河氏は避妊具を使わないことがあったという。性行為中、翔子さんが惨めで泣きそうになると、ニヤニヤした表情の広河氏にこう言われたという。

「女性は嫌がると妊娠しやすくなるから気をつけろ。戦地に妊婦が多いのはレイプが行われているからだ」

 翔子さんによると、セックスの際、肌が透けて見える前あきの白い上着を着るよう、広河氏に指示されたことがあった。蝶の形をした青色の器具を性器に装着され、明大前の商店街を歩くよう命じられたこともあった。広河氏は少し後をついてきて、リモコンで器具を作動させていたという。

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 このころ翔子さんは、アルバイトを終えて帰宅すると、自然と涙があふれ出た。体に重りをつけられたように感じ、ベッドから起き上がるのも億劫だった。頭がぼうっとし、考えることができなかった。

「自分は汚い、ダメな人間だ……。そう思って、このまま消えたくなりました」

しばらくは人を信じることができず

 ある日、資料室で何度目かのセックスを終えたあと、翔子さんの足の傷を見た広河氏に、「その足はなんだ。汚い肌だな。もう他の女を探そうかな」と言われたという。広河氏から年齢を尋ねられ、翔子さんが20代前半の実年齢を言うと、こんな言葉を浴びせられたという。

「もうセックスの女としては終わりだな」

 この後、広河氏からの性暴力は減った。データ整理の仕事が終わったのをきっかけに、翔子さんは広河氏の事務所を去った。大学で初めて広河氏に声をかけられてから、9カ月が経っていた。

 広河氏にさんざん蔑まれ、まるで玩具のように扱われたという屈辱感と、性的行為をきっぱりと拒絶できなかったことへの自責の念は、翔子さんの深い部分を侵した。

 しばらくは人を信じることができず、うつのように無気力な状態が続いた。被害を誰にも知られたくないことから、親や友人と距離を置いた。医師やカウンセラーにも頼れず、精神的に孤立した。報道の仕事につくと広河氏といつ会うともしれないと恐れ、進路を変えた。

 

 年月が経ち、男性に対して信頼と愛情をもてるようになってからも、背後から胸を触られると、広河氏の記憶がフラッシュバックした。嫌悪感とともに、激しい怒りが込み上げた。そのたび、懸命に抑え込まなくてはならなかった。

 それでも結婚、出産をし、幸せな時間も訪れた。