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第6回:山田明子についてアラフォーのミューズ、山田明子。

genre : エンタメ, 読書

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 ところが。

 2013年ごろでしょうか。HARUKOこと山田明子(私のなかでは一生、山田明子)がインスタグラムを始めました。最高のインスタグラムを始めました! このアカウントには、山田明子のいいところがすべて詰まっていると言っても過言ではありません。正確に言えば、私が見たかった山田明子以上の山田明子が詰まっている。

 ひとこと、雑です。良く言えば、おおらか。

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 こんなインスタグラムを、私はいまだかつて見たことがありません。山田明子はモデルです。だのに、写真が暗くても画角が微妙でもおかまいなし。ガニ股で自転車に乗る。大ジョッキを持って写る。軽トラの荷台に乗って足を上げる(それも何枚も!)。いづみどんが犬を抱いて寝ている布団のシーツと毛布の柄がバラバラ。「シングルになっても私は幸せで豊かな暮らしをしているわ!」と喧伝するようなそぶりがまったくない。それでいて下品な印象はゼロ。且つ、保身的自嘲や過度の謙遜をチラつかせるようなことも皆無。なんだこの奇跡のバランスは。かっこいいなぁとため息が出ます。

 インスタグラムのなかの生活なんて虚飾が前提みたいなところ、あるじゃないですか。脚もシワも伸ばして、無菌状態のライフスタイルを切り売りするような写真ばかりのなかで、山田明子は飾らない素の魅力を無自覚にばらまいていました。顔を小さく見せるポーズなど1枚も見当たりません。水着の写真も、スタイル良く写ろうという意識が皆無。しかし、サーフィンで鍛えた体は、肌を加工して肉を上手に隠したよくあるインスタ写真よりずっと説得力があるのです。「等身大の」なんて枕詞をつけて飾り立てた日常がバレていないと思っている連中は、山田明子のインスタグラムをいますぐ見てください。いいか、これが本気の等身大だ!(注:ご本人の名誉のために記しておきますが、ファッションフォトはプロ意識を感じさせる素敵なものばかりです)

 ここで私はひとつのことに気付きます。山田明子のいちばんの魅力は、いわゆる無意識過剰なところだと。自意識過剰な演出ばかりが目に付くSNSで、山田明子の佇まいは、育ちの良さが無自覚に滲み出ていた二十代の頃と変わらず圧倒的。これは誰にも真似できないなと白旗を上げたところに、あ、ノア坊ちゃんとのツーショットを発見。別れたあとも、家族なんだね。私はここでウルっと来てしまいました。これ以外にも、いづみどんの祖父であるマイク眞木さんのお誕生日を、元夫を含む親類縁者で祝う写真も定期的にポストされます。いづみどんの祖母にあたる前田美波里さんといづみどんとの3ショットも。山田明子はやっぱり愛情深い人なんだ。どんなキラキラ写真よりも、彼女がいま幸せなことを雄弁に語る写真だと思いました。

 彼女の無意識過剰は留まるところを知りません。私が最も打ちのめされたのが弁当の写真です。年頃のお嬢さんを持つママモデルとして、娘に作る弁当はいちばんの盛り所でしょう。キャラ弁? それとも自然派マクロビ弁当? 曲げわっぱに玄米仕込む? 仕事もして、綺麗に自分をケアして、ママとしても完璧! そんな姿が世間では好まれます。が、山田明子の作る弁当はそんなんじゃねぇのよ。美味しそうだけど、雑。ハンバーグ、でかすぎ。肉、多すぎ。隙間をポテトで埋め過ぎ。弁当箱の下段がロールパン2個は斬新過ぎ! キャラ弁と銘打って、細く切った海苔だか昆布だかで幼稚園児が描く人の顔みたいなおにぎりの写真をアップしたときには「最高だ!」と声が出ました。

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