文春オンライン

1日で巡る、行楽地の「駅前」だけ楽しむ小さな旅

競馬場、野球場、夢の国を「寸止め」で味わう

2017/05/02

夢の中の人も、醒めた人も――舞浜駅(JR東日本 京葉線)

 駅に降り立つ人はともかく、帰路につく人までもれなくウキウキ気分の駅なんてそうはない。競馬場ならオケラ野郎は死にたい気分だろうし、中継ぎ炎上で逆転負けを喫した西武ファンはヤケクソ気分で駅から帰る。が、舞浜駅だけは違う。ひとときの夢の時間を過ごした人たちを、夢から醒めぬまま電車に乗せる。この駅はそんな不思議な力を持っている。

ディズニーサイドが関わった舞浜駅

 大げさな……と思うかもしれないが、ディズニーランド開業から遅れること5年後に開業した舞浜駅は、駅のデザインや設計まですべてにディズニーサイドが関わっているという力の入れようで、当初は駅名も「ディズニーランド駅」になる予定だったほど。結局駅名は「ディズニーと無関係の施設が『ディズニーランド駅店』みたいな名前を使うと困る」という理由で舞浜になったが、発車メロディにもディズニーソングが流れるなど、徹底的に夢の国への玄関口であることにこだわっている。

 そんな舞浜駅だが、夢から醒める方法がひとつだけ。ディズニーランド方面の南口ではなくて北口側に出てみると、そこには広大な駐輪場と高速道路、そしてその奥にはなんの変哲もない住宅地……という夢とは無縁の現実がある。南側は夢の国、北側には現実。いやはや、せめて電車に乗るまでは夢から醒めたくないものだ。

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夢の国の入り口はまた、出口でもある

 と、行楽地の玄関駅をめぐる旅、いかがだろうか。お昼過ぎに府中競馬正門前駅をスタートすると、西武球場駅に寄り道して、舞浜駅にたどり着く頃にはすっかり日がくれる。でも、競馬場にも野球場にも夢の国にも入らずに駅の周りをウロウロするだけなんていかにも怪しげだが、かかるお金は交通費だけ。それでも行楽の雰囲気は存分に味わえるのだから、そんなプチ旅行もいいかも?

写真=鼠入昌史

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