「2019年に始まった『韓国の暴走』と日韓関係の混迷は、日本が韓国に見限られてきたことに起因している。ですから、残念ながら2020年も日韓関係が大きく好転することはない」
元徴用工の補償問題、韓国国内での不買運動、さらには日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄問題など、2019年は韓国から日本に対する強硬策が次々に繰り出された1年だった。
では、2020年の日韓関係はどうなるのか――。冒頭のように予測するのは、国際政治が専門の中西輝政・京都大学名誉教授だ。
2020年は1月11日に行われる台湾総統選に始まり、1月末にもイギリスのEU離脱が現実のものとなる見込みだ。4月には文在寅政権の今後を占う韓国の総選挙、さらに夏の東京オリンピックが終わると、11月に米大統領選挙を迎える。
2020年という国際政治の節目の年に何が待ち受けているのか。その展望について、「週刊文春デジタル」では中西氏にインタビューした。
対韓国外交が「令和」日本の道筋を決める
「戦後最悪の状況」とされる日韓関係をめぐるニュースは年末まで続いた。
12月24日、1年3カ月ぶりに行われた日韓首脳会談では、安倍首相と文在寅大統領との間で、徴用工問題についての駆け引きが続いた。文大統領は韓国政府が判決には関与できないという従来の立場を強調するにとどまり、解決の糸口は相変わらず見つからない状況だ。
12月27日には、慰安婦問題をめぐる2015年の日韓合意について、韓国の憲法裁判所が「日韓合意に履行義務はない」との見解を示した。日本政府が求める合意履行の義務を骨抜きにしたともいえる内容だった。
ただ、中西氏は、日韓の政界だけでなく、経済界、さらには国民をも巻き込んで過熱する日韓対立について、「これまでよりも慎重かつ冷静に考察することが必要不可欠」とした上で、次のように警鐘を鳴らしている。
「『韓国の暴走』が、令和という時代の行方を大きく方向づける“事件”になりかねない気がしてなりません。近代日本の進路を方向づけたのは、明治初頭の日本が、朝鮮半島の内紛に巻き込まれ、日清・日露の戦争を余儀なくされ、その流れが、結局、昭和の敗戦につながりました。このことを教訓にしつつ、今後の日韓関係の調整に努めねばなりません」