『2020年マンション大崩壊』 (牧野知弘 著)

 昨年7月、『空き家問題―1000万戸の衝撃』(祥伝社新書)を刊行したところ、たくさんの反響をいただきました。

 これまで空き家の問題はどちらかといえば「地方」の問題と考えられてきたのですが、日本の人口減少と高齢化の影響は、ついに大都市郊外部においても顕著になり、空き家の激増が、やがては国家的な問題に発展する恐れがあることを、この著作を記しながら強く感じました。

 ある地域において、空き家の数が住宅総数に対して占める割合(空き家率)が30%を超えると、地域は急速に荒廃し、治安の悪化を招き、これを嫌った住民の脱出が進み、さらに荒廃が進むといわれています。日本の空き家率は現在13.5%ですが、この率は、東京五輪後の2023年には20%を超えるといわれています。これは今後、日本の各地域で「コミュニティの崩壊」が生じることを意味します。

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 日本の社会は「核家族化」が進み、親族間のコミュニケーションが希薄になったといわれています。家庭内でも、子供は個室に引きこもり、家族間の会話が少なくなったといいます。コミュニケーションの希薄化は、各人のME(私)化をもたらし、人々は他人の生活に関心を示さなくなる一方で、自身の欲求の追求に余念がなくなりました。

 それでも人は一人では生きていけません。現代においては、他人との接触なくしては社会生活を営むことは不可能だからです。

 人口の減少と高齢化が世界最速で進展してきた日本において、また核家族化が進んできた社会において、さらには全国600万戸を超え、いまではごく「ふつう」の住居形態に成長したマンションにおいて――コミュニティの崩壊がどんな形で生じつつあるのか、その現場を追ってみたのが本書です。

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