文春オンライン

2020/01/10


本人が望む代名詞を使うのが肝

 今回の一連の動きは「She」「He」を廃止して全ての人を「They」と呼ぼうというものではない。それぞれの人を、本人が望む代名詞で呼ぼうという趣旨だ。

 ニューヨークを拠点とするあるNPOは、公式ウエブサイトの職員名のリストに本人が希望する人称代名詞を記載している。

記載例:

マイケル・モラレス
人称: He/Him/His

ジューン・ウィリアムス
人称: She/Her/Hers

 マイケルは一般的に男性名であり、ジューンは女性名だ。このNPOではファーストネームの性別と、希望する代名詞の性別は全員が一致しており、かつ「They」の希望者はいない。だが、それは「たまたま」と捉えるべきかと思われる。

©iStock.com

 このNPOに勤務する「マイケル」がシスジェンダー(生まれつきの身体の性別と性自認が一致)で、マイケルが誕生時に親に付けられた名前なのか、FtM(女性→男性)のトランスジェンダーで、自分で付けた名前なのかは不明だ。そのこと自体は問題ではなく、マイケルが「He」と呼ばれることを希望していることが重要なのである。


They 反対論者、3つの理由

「He/Sheの代わりにThey」に賛同する人もいれば、反対する人も多い。反対する層は理由によって3つに分かれる。

●文法

 先にも書いたように英語は主語や代名詞のジェンダーが非常にはっきりしており、かつ単数/複数の区別にも厳密だ。つまり「They」を単数形として使用することは文法的に馴染まないのだ。ただし人物の性別が不明な場合に「He or She」とすることがあり、そのクドさを解消するために「They」を使うケースは昔からある。

 サム・スミスのインスタグラムや、この問題を取り上げたメディアの記事のコメント欄には「They」を単数形として使用することは「文法的に間違っている」とするものが多々あり、それに対して上記の例を出し、「性別の分からない相手には昔からTheyを使ってきたじゃないか」とする反論がある。ジェンダー・ニュートラルな代名詞の使用に賛同はするものの、文法の観点から「They」の単数使用に反対し、新語を作ることを提唱する人も見受けられる。