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遠くからでもまた来たくなる発見のある店 進駸堂中久喜本店

2015/12/12

genre : エンタメ, 読書

 本屋愛の強い出版社の営業さんや、休日に本屋巡りをしてしまう書店員さんから、進駸堂(しんしんどう)という本屋さんの名前をよく聞くのでずっと気になっていた。調べてみると栃木県小山市で120年営業している老舗書店、母方の郷里が小山なので、親近感もあり、以前、このサイト「本の話」でも、コラムを書いていただいたこともあるというご縁もあって、思い切って取材を申し込んだ。

進駸堂中久喜本店。
落ち着いた店内。

 小山駅からは4kmほど、ホームセンターや大型ショッピングモールの並びに進駸堂中久喜本店はある。市内循環のバスは1時間に1本程度、鈴木毅店長によると、ほとんどのお客様が車でご来店する、ロードサイド型店舗だ。商圏は広く、休日であれば宇都宮市の南から古河市、栃木市くらいまでをカバーする。レンガ造りの外観、フローリングの店内は落ち着いたオトナな雰囲気で、客層は、30代から50代の男性が中心、鉄道やアウトドア、映画、ミリタリー、SFといった、マニアなオトナの本好きが多く、すぐそばのショッピングモールには全国チェーンの書店が入るが、棲み分けはできているようだ。

オトナな男性ターゲット。この時期ならやはり『スター・ウォーズ』。
伊藤計劃さん、円城塔さん共作の『屍者の帝国』関連本を大展開。

 本好き本屋好きおじさんである筆者は、まさにターゲットど真ん中。『スター・ウォーズ』の特設売場でも、ビジュアルブックやパロディ絵本から評論本までの充実の品揃えで、ついつい新書判の『スター・ウォーズ論』を手に取ってしまう。アニメ化された『屍者の帝国』のコーナーでは、作中にちりばめられたパロディの元ネタ本を集めて展開していて、ここでも、そういえば『カラマーゾフの兄弟』も『吸血鬼ドラキュラ』も読んだことないな、と、手に取ってしまう。普通に暮らしている常識的なオトナは、改めて『吸血鬼ドラキュラ』の本を読むようなことはないのだが、この売場ではつい出来心で買ってしまいそうだ。

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「映画化、アニメ化されました!」と、原作本を積み上げるだけでなく、ターゲットのマニア心をくすぐって、目を止める、手に取らせる力のある売場だ。

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