突然の出品“追加事項”条件「フランスでの上映」「3年間配信できない」
そして、今年に入ってNetflixオリジナル映画である『オクジャ』と『マイヤーウィッツ ストーリーズ(ニュー アンド セレクテッド)』(原題)の2作品が初めて、第70回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門へ正式出品されることになりました。
『オクジャ』は韓国のポン・ジュノ監督作品。すでにハリウッド進出を果たし、クリス・エヴァンス主演の『スノーピアサー』(13年)を制作しています。『マイヤーウィッツ ストーリーズ』はノア・バームバック監督作。自主制作時代に才能を認められ、最近はメジャー俳優を主演に迎えた映画を作るようになりました。
カンヌ映画祭に、ストリーミングサイトが制作した映画が出品されるとは快挙です。それだけ、良質な作品が作られている現実は、映画祭側も無視できない状況なのでしょう。
ところが、5月10日になってカンヌ映画祭は、2018年度以降の出品作品の条件に「フランスの映画館での上映を約束する」という追加事項を発表しました。そしてフランスには、「劇場公開から36か月間は映画をストリーミングサービスで配信できない」という法律があります。つまりNetflixが制作した映画はカンヌに出品すると、必ずフランスの映画館で公開され、そのあと3年も配信ができない……。
ストリーミングサイト製作の映画に限定した賞を設けてほしい
門戸が開けたと思った矢先の出来事でした。確かに映画館での上映がされない作品に、劇場側が不服を抱いたとしても無理はないでしょう。暗闇の中、大きなスクリーンと音で観るという、映画の絶対の形が崩れるわけですから。もしストリーミングと劇場公開を同時に行ったとしても、家で観られる利便性を考えると、「映画は映画館で観る」というこだわりを持ったコア層しか、劇場に足を運ばない可能性も高いです。かといって、Netflix側がカンヌ出品作を、自社では3年もお蔵入りさせなければいけないというのも、到底ありえない話です。やはり映画館とストリーミングサイトが、互いの利権を侵さない配慮がまずされるべきだったのでしょう。
『オクジャ』と『マイヤーウィッツ ストーリーズ』は、2017年度出品作なので上述の追加事項は適用されませんが、とりあえず、来年からはストリーミングサイト制作の映画が、カンヌ映画祭に出品されることはなくなりそうです。大変進歩的な出品決定だったのに、白紙に戻るのは残念な展開です。また改めてストリーミングサイト制作の映画に限定した賞を設けるなど、革新的な判断が行われると、カンヌも一層華やかになるかと思うのですが……。