戦後の混乱に乗じ、食糧や仕事を餌に若い女性を山林へ誘い出しては襲い続けた凶悪犯・小平義雄。逮捕後、男は「ただ犯りたいだけ」「腰から下は獣ですよ」と異様な供述を繰り返した。裁判で明かされたおぞましい犯行の全貌とは? そして小平のその後とは⋯⋯。

 鉄人社の文庫新刊『戦後まもない日本で起きた30の怖い事件』よりお届けする。(全2回の2回目/最初から読む

写真はイメージ ©getty

◆◆◆

ADVERTISEMENT

最初の犯行

 25日、宮崎さんが再びボイラー室を訪れる。なんでも、今夜の列車で母の疎開先に向かい、そこで養生することになったので報告に来たのだという。小平のことを優しい人間と思ったのだろう。それから小平は彼女と一緒に食事し、いったん女子寮の自室に引き上げた宮崎さんの後を追い、部屋を訪ねる。彼女は何の不信感も抱かず、小平を室内に招き入れた。

 何時の列車に乗るのかなど、他愛もない会話を交わしながら機会を伺い、周囲に人けがないことを確認したうえで、ストレートに性交渉を頼んだ。「おじさん! 冗談は言わないでよ」と拒む宮崎さん。途端に小平は頭に血を上らせ、逃げる宮崎さんの首を絞める。ほどなく彼女が気絶したため、煙草をふかしながら覚醒するのを待った。

 宮崎さんは目を覚ますと観念したのか、自ら衣服を脱いだ。躊躇なく強姦し殺害。遺体は中庭の防空壕に捨てた。事件はすぐに発覚したものの、憲兵隊が別の男に嫌疑をかけたタイミングを見計らい、小平は退職。そのまま行方をくらます。

 第二の犯行は1ヶ月後の6月22日。栃木県の東武鉄道栃木駅で、「頭を束髪にして、綺麗なモンペをはき、一見大家の奥さんふうの器量のいい女」(後の小平の証言)の主婦・石井ヨリさん(同30歳)を見かけ、声をかけた。