「わしは人面獣心です。腰から下は獣ですよ」

 裁判は逮捕から半年後の1947年3月3日、東京地方裁判所で始まった。早朝から傍聴者たちが押し寄せ、開廷1時間半前には350枚の傍聴券は全て出尽くす。

写真はイメージ ©getty

 小平は黒の背広に紺のオーバー、深く編み笠をかぶり、新聞社のフラッシュの中をくぐりつつ入廷。

 被告席で編み笠を脱ぎ、神妙な顔で着席した。検察の起訴事実は10件の強姦殺害と30件の婦女暴行。

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 このうち小平は渋谷区の元東横百貨店別館地下室で17歳の女性が殺害された事件(1945年11月1日)、芝区(現・港区)の運送会社廃自動車置き場で国民学校高等科2年の女子生徒(同15歳)が殺害された事件、緑柳子さんの遺体が見つかった同じ増上寺で絞殺体で発見された17、18歳の身元不明の女性の計3件については「覚えがありません」と否認したものの、それ以外の起訴内容については素直に認め、「戦争のときはわしよりむごいことをした連中を知っていますが、平和なときにわしだけひどいことをした者はいないと思います。全く人間のすることじゃありません。わしは人面獣心です。腰から下は獣ですよ」と語った。