麻生副総理発言に見る「権力の構図」
麻生太郎 副総理兼財務大臣
「だから認可しなきゃよかった。俺は反対だったんだ」
『週刊文春』 4月27日号
こちらは少し前の発言。文書の中には「閣内不一致(麻生財務大臣反対)」と記されていたが、国会で加計学園問題が追及されるようになってから、麻生副総理がこのように発言していたと『週刊文春』にて報じられている。安倍首相は麻生氏の発言に対して「あの人は分かっていないよ」と不満を露わにしていたという。
麻生副総理が獣医学部新設に反対しているのは、獣医師の定員の問題がかかわっている。日本獣医師会が50年以上にわたって獣医学部新設に反対してきたのは、国内の獣医師は不足していないという見解に基づくものだ。そして、麻生氏は日本獣医師会とかかわりが深い。2013年に開催された日本獣医師会の蔵内勇夫会長就任記念祝賀会では、麻生氏が発起人を務めている。
東洋経済オンラインでジャーナリストの安積明子氏は、加計学園問題の背後には「麻生vs.菅」の構図が見え隠れしていると指摘している。文書の中で松野文科相と萩生田副長官は、2016年10月23日の衆議院福岡6区補欠選挙の後で加計学園問題を処理するべきだと主張していた。このときは、鳩山邦夫衆議院議員の次男・二郎氏をかつて邦夫氏と交流があった菅義偉官房長官が応援し、麻生氏は対立候補の蔵内謙氏を応援していた。麻生氏は選対本部長に就任するほどの力の入れぶりだったが、蔵内謙氏の父が、県議を8期務めた蔵内勇夫県連会長である。先にも触れたとおり、蔵内氏は日本獣医師会の会長でもあるのだ。
加計学園の獣医学部を新設したい安倍首相と菅官房長官、それに反対する麻生副総理と日本獣医師会という構図は確実だろう。文書の流出もそのあたりの文脈から発生しているのかもしれない。折しも麻生副総理は7月にも党内第2の規模となる新派閥を結成すると発表したばかり(産経新聞 5月15日)。「ポスト安倍」を見据えて影響力を拡大したい考えを持つ麻生氏が加計問題の鍵を握っている――?