プリウスが売れなくなった理由
なぜプリウスが売れなくなったのか。答えは明快で、3代目の時代に比べると競合するモデルが劇的に増えたからだ。たとえば2019年の普通車販売ベスト10をみても、そのうちの9つがハイブリッドシステム搭載グレードを持つモデルとなっている。今や国内自動車販売数の半分弱をハイブリッドが占めるという状況で、プリウスだけがぶっちぎりという話はやはり虫が良すぎるわけだ。
何より、プリウスの最大のライバルは身内にある。ビジネススラングでは「カニバる」などとあまり美しくない言葉で表されるが、いわゆる共食い状態であることは疑いようがない。
2011年に発売されたアクアはプリウスより小さく低価格なハイブリッド専用モデルで、一時はプリウスを上回るセールスを記録した。そしてシエンタはやはりプリウスより小さいものの、3列シートで6~7人乗りのミニバン的パッケージを実現。取り回しやすさと積載力を両立しており、こちらは普通のエンジンモデルも選べるが、売れ筋はちょっと高額なハイブリッドモデルとなる。
そして2019年、この間に割って入ったのがカローラだ。その名はもはや過去のものかと思いきや、今もグローバルスケールでみればカムリやRAV4と並び、トヨタの屋台骨を支える重要戦略車となっている。
劇的な進化を経て生まれ変わった新型カローラ
そのカローラがフルモデルチェンジを果たしたのは2018年のこと。そして2019年にはハッチバックに次いで、プリウスよりひと回り小さい日本市場専用となる車格でセダンとワゴンが追加投入された。
その基本メカニズムはプリウスと同じながら、設計年次が新しいこともあって、運動性能や静粛性はより洗練されているという印象だ。小さなセダンやワゴンでありさえすればいいという個人・法人のニーズを満たすのみだった前型に比べれば、クルマとしての出来は月とスッポンと言っても過言ではない。
実際、セダンとワゴンが追加されて以降のカローラの販売は絶好調で、2019年の10~12月の月毎販売ランキングではプリウスに大差をつけて1位を獲り続けている。カローラの販売が年々凹んでいくのは、その名前に古さや退屈さしか感じないから……と思っていたトヨタの関係筋にとって、この売れっぷりは様々な示唆に富むものだろう。
それでも2019年、プリウスが販売ランキングで1位に返り咲いた大きな理由は、癖の強かったデザインにマイナーチェンジで手を加えたからだろう。主に前後の灯火周りのグラフィックがスッキリとしたものになり、多くの人から素直に受け入れられる方向に整えられた。これによって販売は再び活気づいたわけだが、前述の通りここ数ヶ月はカローラの絶好調が水を差してもいる。