1ページ目から読む
3/3ページ目

「生徒が大好きでたまらない」からこその「やりがい搾取」

 やや長めの引用であるが、その世界に入り込んで一気に読めてしまう。それくらいに内容が濃い。

 真由子氏は、けっして部活動が大好きというわけではない。だが、生徒のことは「大好きでたまらない」。すると、土日をやむなく部活動に費やしたとしても、そこで生徒の笑顔や充実感に触れたりすると、それが「教員冥利に尽きる部分を刺激してくる」というのだ。

 その結果、部活動のあり方に批判的であったとしても、次第にその教員冥利にハマっていき、気がつけば土日の時間を部活動に注いでしまう。この状況を、真由子氏は見事に一言で表現している。すなわち、「エクスタシー」である。

ADVERTISEMENT

©iStock.com

「授業」の質を担保するため、部活規制も議論すべき

 今日、私たちはこの「エクスタシー」によるブラックな労働を、「やりがい搾取」と呼んでいる。

 自分の時間を犠牲にして、平日は早朝も夕方も、そして土日にまで部活動に力を注ぐ。先生が頑張れば、それなりの成果、すなわち生徒の笑顔や充実感が得られる。この教員としての「やりがい」こそが、部活動のあり方をブラックにしている。

 そして部活動に多大な時間が割かれるということはつまり、教員の他の業務を圧迫することを意味する。これはめぐりめぐって、「授業」という学校教育のなかでもっとも重要な営みの、質の低下をもたらすことにもつながりかねない。

 いま部活動改革に求められているのは、ハマってしまいかねない部活動に規制をかけることである。休養日の設定による活動日数の削減、民間の大会を含む参加大会数の制限など、打つべき手はたくさんあるはずだ。