「GAFAの唯一のミッションは金儲け。我々は改めてそれを心に留めるべきです」

 Google, Apple, facebook, amazon――、頭文字を取ってGAFAと呼ばれるIT業界の4強について警鐘を鳴らすのは、ニューヨーク大学スターン経営大学院のスコット・ギャロウェイ教授だ。

 ギャロウェイ氏は、著書『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』の中で、GAFAを「ヨハネの黙示録の四騎士」(地上の4分の1を支配し、剣、飢饉、悪疫、獣によって地上の人間を殺す権威を与えられた者たち)に例え、その負の側面を忘れてはならないと述べた。同書は世界22カ国で刊行され日本でも12万部のベストセラーとなった。

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「文藝春秋」2月号ではギャロウェイ氏が「現代人の必修科目」である、GAFAの功罪と、GAFA後の世界を語った。

アップルの手元資金はデンマークのGDPとほぼ同じ

「GAFAは、もはやユーティリティ(電気・ガス・水道などの公共サービス)のように、人々の生活に欠かせないものになりました。スマホを持たずSNSを使わず、GAFA抜きで生活することは、電気がない状態と同じです。

amazonのジェフ・ベゾス氏 ©AFLO

 何かを検索したければ、検索市場シェア90%以上のグーグルで検索をします。また、世界的に裕福な人はみな、アップル製品を持っています。アップルの手元資金は約2500億ドル(2017年)、これはデンマークのGDPとほぼ同じです。そして、12億人が毎日フェイスブックとのかかわりを持ち、ユーザーは1日50分をフェイスブックに費やしています。さらに、全米世帯の52%の家庭がアマゾン・プライム(日本では年間約5000円、アメリカでは約1万3000円で、配送料の特典や配信動画を見ることができるサービス)を利用しています。いまや、創業者のジェフ・ベゾスの資産は、約1310億ドルの世界第1位です」

 過去20年間にわたりGAFAが生んだ富の額は、約2兆3000億ドルにも及ぶ。知りたいことが一瞬で分かる検索や、SNSによる人々の新たなつながり方、豊富な商品群を持ったeコマースなど、恩恵は大きい。

対立と激怒を煽る投稿こそ、多くのクリックをもたらす

 しかし、光は強いほど、闇も深い。GAFAは社会の思想的分断や、SNSを原因とする若者のうつ病などをもたらしたのだ。

「『社会の分断』について説明するため、GAFAの中から、フェイスブックとグーグルを取り上げましょう。この2つは、世界で最も支配的なメディア企業ですが、両社とも、広告収入をビジネスモデルとしています。

スコット・ギャロウェイ氏 ©大野和基

 ですから、彼らは、読者がクリックをして、より多くの記事や投稿と『繋がること』を求めます。その『繋がり』を促す一番の要素は、『怒り』です。対立と激怒を煽る投稿こそ、多くのクリックをもたらすのです。人が喜ぶような内容ではなく、少数派の人が書き込むネガティブな内容が、炎上して物議を醸し、シェアされていきます。

 さらに、両社のこのアルゴリズムは、あなたの政治的な好みを見極め、その考えを強化するだけでなく、反対派の印象を悪くするデータも提供し始めます。それが虚偽の内容でもおかまいなしです。そういった記事を見ることは、同族意識をくすぐり、ユーザーに満足感を与えるからです。

 つまり、フェイスブックやグーグルのアルゴリズムとビジネスモデルが、人々の怒りを煽り、フェイクニュースを生み、社会を分断しているのです」