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藤岡好明のような人に、私はなりたい
初勝利ヒロインのあの日、試合終了後にベンチから浮かない顔で出てくる先発・濱口遥大の肩を後ろからさりげなくモミモミしていた藤岡。それは「わかるよ」だったのか「がんばれ」だったのか。そういうことが自然にできる人だから、何も言わずにいるべき場所に向かうのでしょう。
「西澤さん明日空いてます? よかった~ライターさんみんなに断られちゃって」
「前任のライターさんがクライアントとモメて、西澤さんなら大丈夫ですよね?」
水商売由来のウソ笑顔とヒマが売りの私は、よくそういう仕事の振り方をされてきました。断ったらどうなるかなとか、たまに考えます。だけどやっぱり怖いから口は「いつもありがとうございます」と動く。でもまだ私は……藤岡みたいには笑えない、笑えないんです。
もしもこの世に楽しいことしかなかったら、笑顔なんて何の価値もないのかもしれない。己の投手運命をただ静かに受け止めて、与えられた場所で精一杯投げる。「ほめられもせず、苦にもされず、そういうものに私はなりたい」と宮沢賢治は言いました。ただこれだけは伝えたい。藤岡は今、ベイスターズになくてはならないサムライソウル。藤岡好明のような人に、私はなりたい。
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