初めての「サンタ」で言われた「そんなにいい子に見せたいの?」
―― 経歴を改めて確認して驚いたんですが、今も続いている明石家さんまさんとのクリスマス特番『明石家サンタ』ではじめて進行役をされたのは、入社2年目だったんですね。大抜擢だったと思うんですけど。
八木 そうですね。でも、あの時は抜擢かどうかもよく分からないままやってたと思います。だって、それがこんなに長く続くとも思ってないですから。特番のひとつみたいな感じだったので。で、終わった後にプロデューサーの三宅(恵介)さんが来て、「そんなにいい子に見せたいの?」って言われたのをすごく覚えてます。その言葉は私のアナウンサーとしてテレビに出る上での原点になってるんです。
たぶん私が、さんまさんが電話切っちゃった時に「えっ、かわいそう」かなんか最初に言ったんですよ。で、「どうしてそんなにいい子に見せたいの?」「別にいいじゃない、嫌われたって。相手に嫌われたって、見てる人にそれが正しければいいじゃない」って言われたことは、バラエティだけじゃなくて、報道とか情報をやる上においてもすごく原点になってます。目の前の人に好かれる、嫌われるじゃなくて、見てる人にフェアであることが大事なんだなっていうふうにすごく思った原点でしたね。だから、『サンタ』でアナウンサーとしての姿勢を学んだ(笑)。
―― おお、『明石家サンタ』がアナウンサーの原点! 確かに結構、電話の相手に厳しい時ありますもんね。
八木 そうそう。それでたぶん2回目ぐらいから、私が電話を切ったりしてるんですよね。
―― 「さようなら~」って(笑)。
八木 ちょっとそこから、かわいくない女になり始めた。それが女性としてはよかったかどうかは別ですけど(笑)。
台本に書いてあることがすべて正しいわけじゃない
―― さんまさんには何か言われたりしました?
八木 さんまさんもとやかく言わない方ですね。さんまさんに一度だけ言われたのは、お正月の朝にやってる生放送の『爆笑ヒットパレード』で司会をご一緒した時があったんです。その時に、さんまさんの師匠が中継で出てらっしゃるのを紹介する時に、台本に「師匠をご用意いたしました」って書いてあったんですよ。それでそのまま「さんまさん、今日、お正月ですから、師匠をご用意いたしました」って言って呼びかけたら、本番中は普通にやり取りしてたんですけど、本番終わった後に、「八木、すまん。『師匠を用意』っていうのだけは勘弁してくれ」っていうふうに言われたんです。私もそれを読んだ時に失礼だなって思ったんだけど、台本に書いてあるから、それが面白いのかなと思って読んじゃったんです。
で、これもその時に学んだことなんですけど、台本に書いてあるからといってすべてが正しいわけではないよねって。やっぱり一回ちゃんと自分の言葉として腑に落ちるかどうか考えなきゃいけないんだなと。怒られたのってそのぐらいじゃないかな。あとは、さんまさんは空気で分かるんですよ。気に入ったか気に入らないかが。だから、「空気を読め」とかよく言ってた時期がありましたけど、さんまさんの場合、読まなくても分かりやすいんですよ。全員にすぐ分かる。発散してる(笑)。で、「あ、これはダメなんだな」とか「これはオッケーなんだな」とか、そういうので学んでいった感じがありますね。