「会話をしているから仲が良い」じゃない
――映画『いつまた、君と 何日君再来』(2017年)のときのインタビューで、「自分も親になって、親の役の気持ちが以前よりもわかるようになった」とおっしゃっていました。逆に、結婚や子育てを演技で経験したことが実人生に役立った、ということはありますか?
向井 物語と現実は別物ですからね。必ずしも演じた家庭が自分の理想とは限りませんし、台本に書かれていることしかやっていないので、ドラマから影響を受けることはそれほどないかもしれません。
ただ、親子に関して言えば、想像で演じていたころは、過剰に子どもと仲良くしようとしていた気がします。実際に暮らしてみると、親子とはいえ、そこまでベタベタしないんですよね。今はまだ小さいので、抱っこしたりしますけど、『10の秘密』の子どもは14歳。しかも女の子ですから、大人の女性と話すような、少しぶっきらぼうなくらいの距離感でもいいのかなと思っています。
――親子だからなんでも話すとも限りませんしね。
向井 もちろん、そういう場面もあるのでしょうが、固定概念で演じないほうがいいのかなとは思います。親子でも熟年夫婦でも、「会話をしているから仲が良い」というわけではなく、居ずまいで信頼関係を感じさせるものってありますよね? わかりやすく「仲良し親子」にしないほうがいいのかなと思いながら演じています。
「向井さん、秘密ありますか?」
――ちなみに向井さん、プライベートでは秘密主義ですか?
向井 いや、僕はなんでも話します。知らない人にベラベラ喋ったりしませんが(笑)、家族には、その日にあった出来事を隠さず話します。
――家族や近しい人との間では、秘密のない関係が理想だと思いますか?
向井 誰にでも大なり小なり、秘密はあるんじゃないですか? この写真の僕だって(著書『ぼくらは働く、未来をつくる。 向井理×12人のトップランナー』の表紙を指して)、ズラをかぶってますからね。
――ええー! それはまた大きな嘘を!
向井 「地毛」とは言ってないので、嘘はついてないです(笑)。役で坊主になっていたので、秘密にしていただけ。そんな程度の秘密はたくさんあると思いますよ。
(#2へ続く)
写真=佐藤亘/文藝春秋
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#2 デビュー15年目 向井理が憧れる“昭和の名優”「セリフ一つで、いくらなんだろうって」
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