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デビュー15年目 向井理が憧れる“昭和の名優”「セリフ一つで、いくらなんだろうって」

『10の秘密』主演・向井理さんインタビュー #2

2020/01/28

 現在放送中のドラマ『10の秘密』(カンテレ/フジテレビ系)で、初挑戦となるシングルファーザー役を務めている俳優・向井理さん。昨年は『わたし、定時で帰ります。』(TBS)で、部下の仕事を黙ってフォローする上司役を好演。放送終了後も「種田ロス」で話題となりました。
 デビュー15年目を迎え、テレビに限らず、映画に舞台と、様々なフィールドで“演じてきた”向井さんに聞く「俳優論」――。

(全2回の2回目/#1より続く)

俳優の向井理さん

◆◆◆

――『10の秘密』は登場人物たちが皆、秘密を抱えていますが、いまはSNSもありますし、秘めておくことが難しい社会。とても今っぽいテーマのドラマだと思いました。

向井 たしかに、今の時代ならではですよね。僕は一時期、ブログをやっていましたが、それも数年前にやめました。ドラマの公式SNSなどに出ることはあっても、個人ではやっていません。

 作品の宣伝ツールとしては、SNSは有効かもしれませんが、僕個人はなくても生きていけるので、やらなくてもいいかなと思っています。

「俳優の仕事は、派遣社員のようなものです」

――著書『ぼくらは働く、未来をつくる。 向井理×12人のトップランナー』では、雇用や環境、エネルギー問題など、興味深いテーマでそれぞれのジャンルの方と対談されていて、向井さんが社会の一員として高い意識を持っておられることが伝わってきました。そういうことをSNSで発信されたらいいのにと思うのですが。

向井 この本は、『AERA』の連載をまとめたもので、同年代をテーマに、僭越ながら対談相手も僕が提案させてもらいました。雑誌や書籍ならいいのですが、ネットで個人的な思想を伝えるのは、役にとっては邪魔でしかないんじゃないかと思っているんです。

 

 2人目の子どもが生まれたとき、僕は公式発表をしませんでした。それは、当時『きみが心に棲みついた』(2018年・TBS)というドラマで、ヒロインの吉岡里帆さんの首を締めたりするような猟奇的な男を演じていたので、その裏で2人も子どもがいるのを報告するのはどうなんだろうと思ってしまったんです。

――なるほど。

向井 ドラマを観てくださる方を混乱させてしまうんじゃないかと。俳優のバックボーンを表に出すほど、純粋に役として観てもらえなくなってしまいます。プライベートを特別、隠すつもりはないのですが、意識的にひけらかすことはしていません。

 俳優の仕事は、1クール、3ヶ月終わるごとに違う現場に行って、名前も性格も仕事も違う役になる。そんな派遣社員のような生活なので、固定されたイメージで観られてしまうと、自分とかけ離れた役ができなくなってしまうのでは、と危惧しているんです。

 

――向井さんは、自分の演技が評価されることより、白河圭太役なら白河圭太として、作品全体のなかで役として存在することをすごく大事にされている印象があります。

向井 作品は、俳優だけでなく、監督、衣装、照明といろんな部署の人たちが集まって制作します。全員がいなければ成立しませんし、自分ひとりが頑張って熱演すればよい作品になるとは限らない。主役だから偉いという考えは全く持っていません。たまたま自分がフィーチャーされただけで、ほかの登場人物を主役にして、他の視点から描くことだってできる。すべては群像劇だと思っています。