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【西武】80~90年代の黄金カード「LG決戦」の記憶

交流戦 指名対決 テーマ「80〜90年代の黄金カードLG決戦」 文春野球コラム ペナントレース2017

2017/06/07
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渡辺久信が今でも自慢している90年の「LG対決」

 次の「LG対決」は87年、後楽園球場最後の年。指揮をとって2年目の森祇晶監督は、広岡前監督より、対巨人を意識していなかったように思えました。このシリーズのインパクトは何といっても日本一を決めた第6戦でしょう。まず2回、一死2塁の場面。ジョージ・ブコビッチの打球は大きな中飛。タッチアップで3塁に進んだ清原和博は、オーバーランして止まりかけました。ところが、伊原春樹3塁コーチの腕がグルグル回っているのを見て猛然と本塁に走り生還。

 そして、語り継がれる名シーンは8回のできごとでした。二死から辻発彦(現監督)が安打で出塁。続く秋山幸二の中前打で2塁、3塁を回り、一気にホームイン。中継プレーに難があるのを見抜いていたスコアラー、コーチの大仕事でした。そして9回表、すでに二死となったところで「異変」が。1塁手の清原の目から涙が止まらなくなってしまったのです。2年前のドラフトで巨人に裏切られた、と感じていた清原。感極まってしまったのでしょう。最後の打球が中飛で助かりました。内野ゴロだったら送球を受けられなかったのではないかと。

試合中に涙が止まらなくなった清原和博 ©文藝春秋

 この戦いで野球観の違いを見せつけられた巨人ナインが、さらにショックを受けたのが、90年の「LG対決」の4連勝でしょう。スコアは5対0、9対5、7対0、7対3とまったく一方的な展開。初戦は渡辺久信(現SD)、第3戦は渡辺智男(現スカウト)が完封勝利。

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 その初戦では、初回のオレステス・デストラーデの3ボールからの先制3ランが強く印象に残っていますが、負けず嫌いの渡辺久は、3安打完封と自ら3つのバントを決めたことを、今でも酒席で自慢しています。また、ルーキーの潮崎哲也(現2軍監督)がリーグ、日本シリーズとも胴上げ投手に。ただ、シリーズの最後の打者の投ゴロをつかんだ際に両手を挙げ喜びを表し1塁へ送球。試合後に「あれで暴投したらどうするんだ」と慎重居士の監督に叱られたとか。

90年の日本一の瞬間 ©文藝春秋

 黄金期のかげりが見えてきた94年は、西武として初めて巨人に敗れた日本シリーズとなりました。初戦は大勝したものの、清原以外の打棒がふるわず2勝4敗の結果に。試合よりも最後となった第6戦の試合前の練習中、東京ドームのビジョンに「森監督退任」のニュースが流されたのが衝撃的でした。その後、02年、08年と対戦し1勝1敗。ただ、自身の記憶としては昔のほうが鮮明です。今年は久しぶりに「LG対決」を見てみたいのですが、お互いに現状では厳しいですね。でもCSがありますから、では消極的でしょうか。

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