コーダ(Children Of Deaf Adultsの略で、聞こえない親をもつ聞こえる子供のこと)を主人公にした小説『デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士』(文春文庫)の著者である丸山正樹さんと、自身がコーダであり、ろう者の両親のことを描いたドキュメンタリー映画『きらめく拍手の音』が公開されたばかりのイギル・ボラ監督。様々な縁が重なって、ついに対談が実現した。
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不思議な縁がつながって
丸山 ボラさんと会うのは今日が4回目になりますね。初めてお会いしたのは『きらめく拍手の音』の試写会場ですけど、ボラさんが『デフ・ヴォイス』を読んでくれているのは、今年の3月に韓国で出版された同作ハングル版の宣伝サイトにコメントが載っていたのを見て、知っていたんですよ。だから私の方は、映画はもちろん、ボラさんと是非お話ししたいと思っていたんです。
ボラ 私の方も丸山さんには是非お会いしたいと思っていて、配給・宣伝会社の方に連絡をとってほしいと頼んでいました。
丸山 ええ、そんな風に聞いてはいたんですが、正直言うと社交辞令だと思っていました(笑)。それが、紹介されて会った瞬間ハグされて。距離は一気に縮まりました。
ボラ ハグしました? 全然覚えていません(笑)。
丸山 あれ、私の思い違いですか? そんなことはないと思うんですが(笑)。
映画はとても良かったです。全体を通して、ご両親の人物像がとても明るく楽しく描けていて、バイタリティにあふれている。辛いことを話していてもそう見えない。カラオケのシーンにそれが象徴されていましたね。弟さんが画面の隅っこの方で(笑)、手話で歌詞を追っているのも良かった。
ボラ ありがとうございます。
丸山 映画についてはまた後で詳しく感想をお話ししますね。
ボラさんとはその後も2回ほど会う機会があったのですが、そこで初めて、ボラさんが『デフ・ヴォイス』ハングル版の「解説」を書いてくれていることを知ったんです。びっくりしました。それまで誰も教えてくれなかったんですよ! 私はもちろんハングルを読めませんし。それで、その解説を、友人で今回も通訳・翻訳を担当してくれている矢澤浩子さんに翻訳してもらって、読んだらもう、本当に感激しました。ボラさんが私に会いたいと言ってくれていたのは社交辞令ではなかったんだと分かりました。