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「刑務所を出たら風景が変わっていた」

「お務め(刑務所)に長期間にわたり行っていて久々に出てきたら、環境が大きく変わって驚いた。目に映る街の景色、風景まで変わってしまったようだ」

 対立抗争事件で逮捕され、10年近くの刑期を終えた指定暴力団住吉会系幹部が刑務所を出所したのは、暴排条例施行後のことだった。事件を引き起こす前にシノギ(資金獲得活動)で付き合いのあった一般市民のほとんどが「今後の付き合いを絶ちたい」と申し入れてきたという。

 暴対法は繁華街などの飲食店などから、みかじめ料(用心棒代)を徴収することを禁じるなど、主に暴力団側の活動を規制する内容となっている。対して暴排条例は、一般市民や企業などが暴力団との交際や資金提供、暴力団が開く会合などでの会場提供など様々な利益供与を禁じることが規定されている。

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警察は暴力団排除条例も利用して取り締まりを強化している ©iStock.com

 違反した場合は各県の公安委員会が勧告を出すほか、悪質なケースには中止命令を出す。場合によっては、個人名や企業名が公表されることもある。暴力団との交際が公表されれば、事業者の場合はマーケットから締め出されることとなり死活問題だ。

 さらに警察当局は社会全体での暴排を進めようと、銀行などの金融機関で新規に口座を開設する際に、顧客との間で「暴力団などの反社会的勢力には属していない」ことを誓約する約款を交わすことを求める対策を進めた。

 この結果、多くの暴力団構成員は新たに銀行口座を開設できず、約款に違反した場合は、金銭的な価値は数百円程度のプラスチック製のキャッシュカードと通帳を銀行からだまし取ったとする詐欺容疑で逮捕されるケースも続発した。

 前出の長期間服役していた住吉会系幹部も、「刑務所から出てきたら、銀行口座すら作れず、これも驚いた。古くなったキャッシュカードを交換してくれるかどうかわからず、自分名義で維持していた銀行口座のカードを大切に使い続けている」と環境の様変わりの実情を語った。