池上彰が「おい、マジか」と批判した、読売記者の質問
読売新聞記者
「こういった在職中に知り得たものを明かすのは(国家公務員法の)守秘義務違反に当たらないかという指摘もされると思うんですけど」
毎日新聞夕刊 5月31日
メディアのバトルからも目が離せない。中心にいるのは読売新聞だ。5月22日の「前川前次官 出会い系バー通い」報道は、「前川潰し」のための首相官邸からのリークによる報道ではないかと批判を浴びたが、読売新聞の原口隆則東京本社社会部長は「次官時代の不適切な行動 報道すべき公共の関心事」という見出しの反論記事を掲載した(読売新聞 6月3日)。
読売新聞と安倍政権の近さは、メディアの中でも群を抜いている。『週刊文春』の集計によると、第二次安倍政権発足以来の4年5カ月で、安倍首相と読売新聞幹部との会食は30回を数える。「出会い系バー」記事が出たわずか1週間後の5月29日にも、安倍首相と読売新聞の前政治部長の田中隆之氏、現政治部長の前木理一郎氏らは赤坂の居酒屋で2時間にわたって会食を行っている。『週刊現代』元編集長の元木昌彦氏は「安倍御用新聞とでも社名変更したらいい」と手厳しい(J-CASTニュース 6月8日)。
また、5月25日に行われた前川氏の記者会見では、読売新聞の記者から「守秘義務違反では?」との質問が飛んだ。前川氏側からの答えは「ノーコメント」である。
会見に出席した与良正男毎日新聞専門編集委員は次のように語っている。「本来、守秘義務の壁と戦う記者の側からそうした質問をしたのは驚きましたし、ジャーナリズムの危機だと思います」(『週刊文春』6月15日号)
「おい、マジか」と普段のソフトな調子とは打って変わった強い言葉で批判しているのは、ジャーナリストの池上彰氏だ。「『守秘義務』を盾に取材ができなくなってもいいのか。当局が『国民に知らせたい』と考える内容だけが公表され、都合の悪い情報は『守秘義務』の名の下に拒否する。そういう国家になってもいい。前川氏の記者会見で前述のような質問をした記者は、無意識のうちに、こういう発想をしているのです」(『週刊文春』6月15日号)
安倍首相は国会で野党の質問に答えず、菅義偉官房長官は記者会見で「批判には当たらない」「まったく問題ない」と繰り返す。そしてメディアもその発表に唯々諾々と従う――という池上氏が恐れるような状況が来ないことを祈る。