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 年齢を重ねていくうちに、人の思考能力や行動力はどうしても衰え、ごく一部の社員を除いては、引き続き会社に貢献できることは稀である。

 会社にとっても出世をあきらめ会社に「ぶらさがっている」社員を60歳以降も面倒をみていくことにメリットはない。逆に彼らに施さなければならない金銭は、翻って若手の給与の抑制につながる。これを見ている若手はモチベーションが下がる。この若手も40歳を迎える頃には、「俺たちもぶらさがろう組」に帰属するようになるのだ。

「40歳までの18年間の勝負」で社員の価値観が変わる

 あえて定年制を40歳に繰り上げる制度にしたら日本社会はどうなるであろうか。40歳でリセットされることが明らかになれば、企業で働く社員の価値観は大幅に変わることだろう。最初に選択した会社では大学を卒業する22歳から40歳までの18年での勝負となる。会社に残って出世したい社員は、会社に貢献するということがなんであるかを真剣に考えることだろう。そのための勉強も惜しみなく行うであろうし、毎日の過ごし方もおのずと変わってくるだろう。

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 また会社に対する望みが薄くなった社員は40歳を待つまでもなく、自ら行動を起こすことになるだろう。本当に自分にあった仕事がなんであるかを真剣に考えるようになることだろう。

 会社にとっても、「ぶらさがりおじさん」の面倒をみなくて済む分、多くの給与を若手社員に提供することができるようになる。若手のモチベーションはあがるだろう。

40歳であれば新しい人生をスタートするのに間に合う

 40歳であれば、新しい職場で新たな人生をスタートさせるのになんら支障もないはずだ。学生の時のつまらない感情だけで選択した会社にはさっさと別れを告げて新しい人生に踏み出す、リスクと思っていた転職も、世の中の大半のサラリーマンが40歳までに行うごく普通の行動になる。受け入れる側も、中小企業などにとっては絶対に採用できなかった優秀な大手企業の社員が転がり込んでくるかもしれないのだ。サラリーマンという人生を捨てて、起業する人もおおいに増えることだろう。東京での生活にピリオドを打って、地方でのびのびと自分の才能を生かし始める人も大勢出てくるはずだ。40歳までに見切りをつけた人が続々戻ってくる地方は、おおいに活性化するはずだ。

「40歳定年制度」で毎日の過ごし方も変わってくる ©iStock.com

自らが働く期限を決定できる社会に

 人は働きたいときに働けるまで働けばよい、したがって40歳以降はいつまで働こうが自由だ。自らが働く期限を決定できる社会になれば、日本の社会はもっと活力が生まれるはずだ。こうした社会を実現したうえで、本当に困ってしまった人たちのみを生活保護などの社会保障制度の中でケアすればよいのだ。

 国が縮小均衡するのは仕方がない。であるならば、小さな社会の中で人材を思い切りシャッフルすることだ。現代日本は国全体がサラリーマン化している。社長や役員陣にはおおいに不満があってもそれは居酒屋談義、会社に「ぶらさがる」ことが一番なので、社長の示す方針についてはどんなに不合理で常識はずれなものであろうとも、意見を聞かれたり命じられたりすれば、とりあえず「はい」と答える。こんな社会、国の未来はお先真っ暗なのだ。